本研究の基礎的データとなる各民族での多型頻度の取得,及び発現解析の基礎となる発現ベクターの作成とも順調に進行している.サザンハイブリダイゼーションは200例を終了し,ひとまず達成とする.サザンハイブリダイゼーションの結果を参考にし,次世代シークエンサーで具体的な塩基配列を最終決定する. 次世代シークエンサーでのデータ取得を可能にするためには,48塩基対が350回反復する塩基配列を決定可能にするための遺伝子工学的反応手順,条件を決定し,さらに決定した分子配列をアセンブルするためのソフトウエアを開発する必要があった. 遺伝子工学的反応手順は,長い反復配列であるため,独自の手法が必要であった.この反応は多数の手順を経るため,その反応条件設定には時間を要したが,設定は終了し,104検体分の次世代シークエンサー出力を得た. この配列をアセンブルするソフトウエアをプログラミング言語Rubyにて作成した.多数の類似反復配列をアセンブルするためには,通常のゲノムアセンブルプログラムでは使用していない独自のアルゴリズムを作成する必要があった.最長の反復配列が順調にアセンブルされることを確認した. MUC4発現ベクター作成に関しては,日本人200例の制限酵素断片長多型のうち,4種の発現ベクターをBAC中に作成した.これをpUC系plasmidに移し,大量精製を可能にした.ERRB2,ERBB3のstable transfectantを作成した.作成したMUC4発現ベクターにはFLAGタグがつけてあるが,COS7細胞へ導入したところ,20%程度の細胞が抗FLAGタグ抗体で染色できた.導入高率を高めるため,electroporation条件を検討している.十分な導入効率が得られたら,ERBB2,ERBB3 stable transfectantに導入し,シグナル伝達系の解析に入る.
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