研究課題
1)FGF9誘導肺腺癌が、FGF9非依存性に “癌幹細胞”様特質を獲得する機序の解明を目的として、癌細胞自体のFGF受容体発現変化を検討した。我々は以前、SPC-rtTA, TRE-Fgf9-IRES-eGfp double transgenic miceにFGFR3欠損マウスを掛け合わせたマウスでは、ドキシサイクリンを投与しても腫瘍が形成されないことから、FGF9誘導発癌においてはFGFR3が責任受容体であると報告した。しかし一旦FGF9非依存性増殖能を獲得した癌細胞では、FGFR3の発現は抑制され、FGFR1が新規にmRNA、タンパクレベルで発現することを発見した。この転換には腫瘍関連線維芽細胞の関与するとの仮説を立て、In vitroで上皮幹細胞の増殖と分化を模倣するsphere-like colony formation assay においてFGF9誘導肺腺癌を発症した肺組織から採取した線維芽細胞は、正常肺から採取する線維芽細胞に比較し、支持細胞(feeder cells)として肺上皮の増殖をより促進させることを発見した。また、In vitro でFGF9誘導肺腺癌細胞と正常肺線維芽細胞の共培養により、線維芽細胞にFGF2の発現を誘導することがわかった。これらの事実から「FGF9誘導肺癌の腫瘍関連線維芽細胞はFGF2依存性に“癌幹細胞”様の特質維持に寄与する」という仮説を立て、検証中である。2)FGF9の小細胞癌発症機序における役割の解明についても研究を進行中である。FGF9誘導小細胞癌への形質転換に寄与する責任受容体とその下流シグナル経路について研究を進めている。小細胞肺がんのcell line にFGF9のsiRNAを導入すると増殖能の低下がみられることを発見した。
2: おおむね順調に進展している
我々は、癌細胞自体のFGF受容体発現変化ととの意義について研究を行った。正常肺上皮に高発現するFGFR3が癌組織の増大に伴い、新規に発現するFGFR1受容体に対する癌増殖能の依存性を確認することができた。さらにFGFR1TKIのひとつであるAZD5457を用いて、腫瘍発生の抑制だけではなく、増殖した腫瘍の縮小効果も確認することができた。
今年度以降も、より一層の成果を挙げられるよう研究体制の充実を図る。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件)
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