研究課題/領域番号 |
15H04834
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 貞嘉 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40271613)
|
研究分担者 |
森 建文 東北大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40375001)
大崎 雄介 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40509212)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 心機能低下 / 腎機能低下 / 心腎症候群 / ナトリウム貯留 / Dahl食塩感受性高血圧ラット / 脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(SHR-SP) |
研究実績の概要 |
心機能の低下は腎機能を低下させ、腎機能の低下は心機能を低下させることから、心機能と腎機能は互いに影響しあっている。一方の機能低下は他方の機能低下を引き起こし、心腎症候群を形成する。この機序に関わる要因は多数あるが、その一つにはナトリウム貯留を介した体液量増加がある。ネプリライシン阻害薬(NEPi)はネプリライシンによるナトリウム利尿ペプチド分解を抑制することから、ナトリウム利尿効果を介した心腎症候群の病態緩和が期待される。平成27年度は心腎症候群モデルであるDahl食塩感受性高血圧(DahlS)ラットと、脳卒中易発性高血圧自然発症ラットであるSHR-SPに対するNEPiの効果について検討を行った。 DahlSラットならびにSHR-SPに8%高食塩飼料を給餌し、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)ならびにARB+NEPiを投与した。DahlSラットにおいては薬剤投与による血圧、ならびに腎障害マーカーである尿タンパク排泄量の有意な変化は認められなかった。一方で、SHR-SPではARBならびにARB+NEPi投与は収縮期血圧ならびに尿タンパク排泄量を有意に低下させた。さらに、ARBならびにARB+NEPi投与群は非投与群と比較して腎臓皮質領域ならびに髄質外層領域において腎尿細管障害マーカーであるosteopontin mRNA発現量を有意に低下させた。 以上の結果より、ARBならびにARB+NEPiは高食塩給餌下においてDahlSラットに対しては有意な影響を認めなかったが、SHR-SPにおいては血圧ならびに腎障害を有意に改善した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心腎症候群モデルであるDahl食塩感受性高血圧(DahlS)ラットと、脳卒中易発性高血圧自然発症ラットであるSHR-SPを対象として検討を行ない、ARBならびにARB+NEPiがSHR-SPにおいて有意な血圧降下作用と腎障害低下作用を認めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の検討において、ARBならびにARB+NEPi投与はSHR-SPにおける血圧降下作用と腎障害抑制効果が認められた。本年度では、組織の病理学的・免疫組織学的解析ならびに腎組織の遺伝子発現量をRT-PCR法などにより尿細管障害(osteopontin, KIM-1など)、間質線維化(fibronectin, α-SMAなど)ならびに炎症関連(MCP-1, TNF-αなど)マーカー類の解析を行う。また上皮間質形質転換(EMT)に関わる分子も解析に加えることにより、ARBならびにARB+NEPi投与による腎障害低下作用機序についての検討を行う。 これと並行して、心腎症候群モデルとして我々が近年開発した腎うっ血ラットモデルを用いた検討も行う。心不全時の腎機能悪化(WRF)は患者の予後に影響することが報告されている。WRFと体液貯留の指標であるCVPが関連することからうっ血による心腎症候群の悪化が推察されている。SGLT2阻害薬はグルコース・ナトリウム共輸送体を阻害することから尿中へのナトリウム排泄量増加を介した体液貯留の改善を介したうっ血改善効果が期待される。そこで、麻酔下にてSprague-Dawleyラットの左腎静脈にシルバークリップを留置して片側腎静脈狭窄を作出し、回復後にSGLT2阻害薬を投与しながら一定期間の飼育を行い、腎組織評価ならびにRT-PCR法によって尿細管障害・間質線維化ならびに炎症関連マーカー類の遺伝子発現量の変化を検討することにより、SGLT2阻害薬がうっ血による腎障害に与える影響について解析する。
|