研究課題
1.FSP1の尿細管上皮細胞に対する抗アポトーシス効果に関する検討マウス近位尿細管上皮細胞株(mProx)を増殖後、シスプラチンを最終濃度が5, 10, μMとなるように添加し、24時間後に細胞を回収し、cleaved caspase 3の発現をイムノブロット法で確認したところ、シスプラチン25μM添加によりcleaved caspase 3の発現が確認された。シスプラチン投与と同時にFSP-1 (10μM)を添加することで、cleaved caspase 3の発現は有意に抑制可能であり、FSP1の抗アポトーシス効果が確認された。次に、mProxを増殖後、vehicle (DMSO)、シスプラチン(25μM)、シスプラチン(25μM)とFSP-1 (10μM)の処置を24時間行った。その後、細胞を回収し、イムノブロット法にて各群のBax/beta-actinとBcl2/beta-actinを測定した。FSP1の添加により、Bax/beta-actinは低下、Bcl2/beta-actinは増加し、Bax/Bcl2比は有意に低下し、FSP1の抗アポトーシス効果が確認された。2.尿中エクソソーム内FSP1発現量のバイオマーカーとしての意義に関する検討当院で腎生検を実施した腎炎患者34例(ANCA関連腎症7例、IgA腎症10例、微小変化型ネフローゼ症候群5例、膜性腎症 9例、ループス腎炎3例)の尿検体を採取し、抽出キットでエクソソームを精製し、免疫電顕とNanosightで確認後、イムノブロット法でエクソソーム内FSP1発現量を半定量した。エクソソーム内FSP1発現量は、細胞性半月体の出現率と有意の正相関(r=0.57, p=0.0004)を認めたことから、エクソソーム内FSP1発現量は腎炎活動性の判定指標となることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに、in vitroの実験、および尿検体を用いた実験が進行している。
1) ポドサイト限定的FSP1過剰発現マウス(FSP1.TG/FSP1-/-)の作製われわれは、ポドサイト特異的にFSP1を過剰発現したマウス(FSP1.TG)では、シスプラチン腎症における尿細管間質病変が軽減することを確認している。しかし、FSP1.TGではポドサイト以外の線維芽細胞などにもFSP1の強発現がみられるため、ポドサイトにおけるFSP1発現の効果を評価することが困難である。そこで、FSP1.TGをFSP1ノックアウトマウス(FSP-/-)でバッククロスすることで、ポドサイト限定的FSP1過剰発現マウス(FSP1.TG/FSP1-/-)を作製する。2) FSP1.TG/FSP1-/-における尿細管間質病変の検討FSP1.TG/FSP1-/-とFSP1-/-にシスプラチン腎症モデルを作製し、病理学的検討(判定量的組織障害度、浸潤細胞数、アポトーシスを呈した尿細管上皮細胞数など)およびレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)法を用いた mRNA発現解析(TNF-α, MCP-1など)を実施する。さらに、血液および尿(蓄尿)を採取し、腎機能、蛋白尿量や尿細管間質障害バイオマーカーを測定する。FSP1.TG/FSP1-/-に有意な間質病変抑制が認められれば、FSP1を介したポドサイト-尿細管上皮細胞連関の存在が示唆されたことになる。
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Biochem Biophys Res Commun.
巻: 486 ページ: 499-505
10.1016/j.bbrc.2017.03.071.
Clin Exp Nephrol
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