研究実績の概要 |
本研究では、分泌型FSP1が抗アポトーシス作用および抗酸化作用を介して、AKI新規治療薬として有望であるかを検討している。また、ポドサイトでFSP1を過剰発現する遺伝子改変マウス(FSP1.TG)を用いて、ポドサイト-尿細管上皮細胞連関の存在を検討している。すでに、1) rFSP1がシスプラチン腎症における腎障害を改善すること、2)FSP1.TGでは、シスプラチンによる腎障害が軽減することを確認している。今年度は、1) FSP1の有する抗酸化作用の詳細について近位尿細管上皮細胞(mProx)を用いて検討した。2) FSP1の腎保護作用が、FSP1の受容体であるRAGEを介するか否かを検討した。 1)mProxにrFSP1 10μM添加12時間後にRNAを抽出し、heme oxygenase 1 (HO-1), チオレドキシン(TRX), superoxide dismutase (SOD)の発現をreal-time PCRで検討した。HO-1, TRX, SODの発現は、PBSを添加したコントロール群と比較して有意に上昇した。HO-1, TRX, SODの発現は、酸化ストレス応答転写因子であるNrf2の活性化により誘導される。Nrf2の活性化にはAktのリン酸化が重要であることから、rFSP1 10μM添加によりp-Aktの発現が誘導されるかをウェスタンブロットで確認した。mProxにrFSP1 10μM添加2時間後からp-Aktの有意な発現増強が認められた。 2)RAGE KOマウスを用いて、rFSP1の腎保護作用について検討した。RAGE KOマウスにシスプラチン腎症を誘導して、rFSP1投与が腎障害を軽減するかを検討した。rFSP1投与により、腎機能は改善せず、尿細管障害スコアも改善しなかったことから、FSP1による腎保護作用はRAGEを介する可能性が高いと考えられた。
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