研究課題
アルツハイマー病等の認知症性疾患の発症には,遺伝要因などの先天因子と環境要因などの後天因子が関与する。後天因子の中でも生活習慣病と認知症の相互関係が着目されている。複数の疫学研究からは濃尿病がアルツハイマー病の発症に促進的に働くことが明らかにされている。糖尿病では病初期から末梢臓器においてインスリン抵抗性が生じることが知られているが,中枢神経におけるインスリン抵抗性がアルツハイマー病の病態に関与していることが最近の研究により明らかにされている。本研究は,糖尿病で生じる中枢神経におけるインスリン抵抗性に着目し,初代培養神経細胞,患者由来剖検脳などのヒト生体試料を用いた多層的研究を実施している。代表者らは,アルツハイマー病患者脳内で生じるインスリン抵抗性に関連する病態を疑似化できる共培養システムを構築した。この培養システムにおいては,ドナー細胞とレシピエント細胞を独立したディッシュで培養することにより,ドナー細胞が産生するアミロイドβが初代神経培養細胞(レシピエント細胞)のインスリンシグナル伝達障害を介して内在性タウに異常リン酸化を誘導する。共培養を行ったレシピエント細胞から全RNAを抽出し,逆転写反応を行い,RNA-seqにより網羅的な発現解析を実施した。次に,アルツハイマー病患者由来の剖検脳と対照群の剖検脳からRNAを抽出し,網羅的なRNA-seq解析を行い,発現変動する遺伝子群を同定した。
2: おおむね順調に進展している
ヒト由来の剖検脳からRNAを抽出し,RNA-seq解析による網羅的遺伝子発現解析を行い,そのプロファイルを明らかにできた。
網羅的RNA-seq解析で明らかになったアルツハイマー病の病態に関する分子パスウェイについて詳細な解析を行う。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Brain Pathology
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Dementia Geriatric Cognitive Disorder EXTRA
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