研究課題/領域番号 |
15H04844
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
北川 一夫 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70301257)
|
研究分担者 |
星野 岳郎 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30724679)
水野 聡子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90398793)
遠井 素乃 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (50408465)
丸山 健二 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (70349645)
清水 優子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (20246507)
飯嶋 睦 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (90232115)
柴田 亮行 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (90226176)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 脳梗塞 / 遠隔虚血 / 虚血耐性 / 虚血コンディショニング |
研究実績の概要 |
本研究では脳梗塞急性期治療手段として、遠隔臓器(四肢)虚血負荷(遠隔虚血コンディショニング)の有用性とその機序を明らかにして脳卒中臨床に還元する事を目的としている。 本年度はマウス中大脳動脈一過性閉塞再灌流モデルでの遠隔虚血コンディショニングの実験系を確立することとした。遠隔虚血負荷を行うタイミングとして、非負荷群(グループA)、虚血24時間前(グループB)、虚血直前(グループC)、虚血中(グループD)、虚血直後(グループE)の5グループを検討した。マウス(C57BL/6系統)50匹を用いて6-0ナイロン糸を用いて頸動脈分岐部よりナイロン糸を挿入し中大脳動脈を45分間閉塞、再灌流する事とした。遠隔虚血負荷は 両下肢鼠径部にポリエチレンチューブを用いて大腿以遠を5分間駆血することにより作成した。遠隔虚血負荷のプロトコールは 5分駆血 5分解放の繰り返しを4クール行うこととした。 中大脳動脈閉塞再灌流後24時間に動物を深麻酔下に断頭、脳を取り出し TTC染色で梗塞体積を評価した。 中大脳動脈閉塞5分後の閉塞前値に対する残存脳血流量はグループA:22.0 +- 9.6 %(平均+-標準偏差)%, グループB:16.7 +- 5.1 %, グループC: 16.6 +- 8.1 %, グループD: 18.4 +- 6.6 %,グループE: 16.6 +- 5.6 %であり各群間で有意な差を認めなかった。一方, 脳梗塞体積は グループA:58.9 +- 10.2(平均+-標準偏差)mm3, グループB: 54.8 +- 19.4 mm3, グループC: 69.3 +- 10.8 mm3, グループD: 38.0 +- 22.1 mm3,グループE: 64.5 + 13.5 mm3, であり、コントロールのグループAに比し、グループEだけが有意に梗塞体積が縮小していた。 以上の結果よりマウス中大脳動脈一過性閉塞再灌流モデルにおいては、遠隔虚血負荷は虚血中に遠隔虚血負荷を加えることが脳保護を考える上で最も効果的であると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来 遠隔虚血負荷は虚血24時間前、虚血直前、虚血後に行っても脳保護効果を示すことが報告されてきたが、当申請者らのマウス一過性中大脳動脈閉塞再灌流モデルでの検討では、虚血中に負荷した群にのみ脳梗塞体積縮小効果が観察された。 また臨床研究倫理委員会審査に時間を要し、健常人での経頭蓋超音波ドプラを用いた遠隔虚血負荷の脳血行動態に及ぼす影響は開始できたばかりである。次年度にはその報告ができることが期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
マウス一過性中大脳動脈閉塞再灌流モデルは、虚血負荷の条件が強いので遠隔虚血負荷の側副血行を観察するには適当なモデルとはいえない可能性がある。そこでマウス中大脳動脈遠位永久閉塞モデルを新たに取り入れ、遠隔虚血負荷の脳梗塞体積および脳側副血行に及ぼす影響を検討する予定である。また当大学に実験用MRI装置が導入されたので、遠隔虚血負荷による墨汁加ラテックスビーズを用いた脳側副血行の観察と脳MRI拡散強調画像による早期虚血病変を平行して観察できる実験系を確立し、遠隔虚血負荷の側副血行発達への効果を検証する。 またヒトでは健常人に加え、あらたに脳梗塞患者でも遠隔虚血負荷による脳血行動態へ及ぼす影響を検討するための臨床研究倫理審査を経て検討を開始する予定である。
|