研究課題
われわれは近年、ギラン・バレー症候群(GBS)患者血清中に、単独の糖脂質ではなく二種類の異なる糖脂質の糖鎖が相互作用して形成するエピトープ(糖脂質複合体)を認識する抗体を見出した。本研究では新たな抗体測定法であるグライコアレイを用いて、糖脂質及び糖脂質複合体に対する抗体を網羅的に検討して、新たな標的抗原を同定するとともに、陽性症例の臨床特徴を検討し、抗体が病態に果たす役割を解析することを目的とした。まず基礎的な検討としてグライコアレイ法とELISA法での抗体測定結果の比較を行った。従来ELISA法で10種類の単独の糖脂質と4種類の糖脂質複合体に対する抗体測定を行い、いずれかの抗原に対する反応が陽性であったGBS患者血清を用いて、グライコアレイで10種類の単独の糖脂質およびそれらを混合した抗原45種類(計55種類)に対する抗体反応を測定した。その結果、グライコアレイではELISAで弱反応であった抗体が検出できないケースがあったが、中等度以上の反応があった抗体は全例検出された。またグライコアレイによりこれまで未検討であった各種の糖脂質複合体に対する反応が検出された。グライコアレイはELISAと比較して、少量の抗原と血清で多くの糖脂質複合体に対する抗体を検出可能であることが確認できた。糖脂質抗体陽性例には、複数の抗体が陽性となる場合がある。GM1ガングリオシドに対する抗体は従来GBSの軸索障害型と、またミエリンの抗原であるGalactocerebroside (Gal-C)に対する抗体は脱髄型のGBSと、関連することが報告されている。今回両抗体が同時に陽性のGBSの電気生理学的特徴を検討したところ、軸索型はみられず脱髄型が高頻度であり、抗Gal-C抗体と脱髄の関連が確認された。一方で脱髄型に分類されるが同時にM波の振幅の低下がみられる例もあり、軸索障害の併存も示唆された。
2: おおむね順調に進展している
グライコアレイ法についての基礎的なデータを得ることができたため、研究はおおむね順調にすすんでいると判断される。
初年度に、グライコアレイ法とELISA法のそれぞれの長所が明らかとなった。今後症例数を増やすとともに対象疾患の幅を広げることにより、グライコアレイ法の臨床的意義をさらに解明する。また見出された複合体抗体の病因的意義を、臨床特徴の解析、免疫組織学的検討や動物モデル作成などにより詳細に検討する。
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