研究課題/領域番号 |
15H04845
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
楠 進 近畿大学, 医学部, 教授 (90195438)
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研究分担者 |
桑原 基 近畿大学, 医学部, 講師 (40460860)
宮本 勝一 近畿大学, 医学部, 准教授 (50388526)
西郷 和真 近畿大学, 理工学部, 准教授 (50319688)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 糖脂質 / 自己抗体 / 末梢神経障害 / 脳脊髄炎 |
研究実績の概要 |
われわれは、ギラン・バレー症候群(GBS)患者血清中に、二種類の異なる糖脂質の糖鎖が形成するエピトープ(糖脂質複合体)に対する抗体を見出し報告してきた。本研究では新たな抗体測定法であるグライコアレイを用いて、糖脂質及び糖脂質複合体に対する抗体を網羅的に検討して、新たな標的抗原の同定、陽性例の臨床特徴の検討、抗体の病態に果たす役割の解析を行うことを目的とした。昨年度は基礎的な検討を行い、グライコアレイはELISAと比較して、少量の抗原と血清で多くの糖脂質複合体に対する抗体を検出可能であることが確認したが、今年度はGBS、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、および疾患対照について、グライコアレイで10種類の単独の糖脂質およびそれらを混合した抗原45種類(計55種類)に対する抗体反応を測定した。その結果、IgG抗体はGBSにほぼ特異的に、IgM抗体はGBSとMMNで比較的高頻度に陽性所見が得られた。またsulfatideを含む複合体に対する抗体がGBSでしばしばみられた。眼球運動麻痺を伴うGBSではGQ1bを含む複合体抗体陽性例が多く、その中にはGQ1b/sulfatideに特異的抗体をもつ症例が認められた。またMMNでは、GM1を含む複合体だけでなくGalNAc-GD1aを含む複合体に対する抗体もみられることがわかった。一方、マイコプラズマ肺炎後には、中枢神経あるいは末梢神経の障害をきたす症例が存在する。それらの症例の糖脂質抗体を検討したところ、galactocerebroside (Gal-C)に対する抗体の陽性例が有意に多く、われわれの既報告と合致する結果であった。また抗Gal-C IgM抗体は年齢が若く中枢神経障害に罹患した症例に多く、抗Gal-C IgG抗体は成人でGBSなどの末梢神経障害をきたした症例に多くみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はGBS, CIDP, MMNなどの免疫性ニューロパチーについて、グライコアレイを用いた抗体検査結果の所見が得られ、概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
免疫性ニューロパチーについて、さらに未検討の抗原を用いた検討を行うと共に、免疫性中枢神経疾患にも対象を広げて検討する。また見出された複合体抗体の臨床的意義を詳細に検討する。
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