研究課題/領域番号 |
15H04846
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
野口 悟 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第一部, 室長 (00370982)
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研究分担者 |
原 雄二 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60362456)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遺伝性疾患 / ミオパチー / カルシウム / 病態 / モデルマウス |
研究実績の概要 |
細管集合体ミオパチー(TAM)患者に見出したSTIM1変異(5種類)について、STIM1/YFPレポーターコンストラクトを作成した。野生型のSTIM1/YFPレポーターをC2C12細胞に導入すると、YFPは、細胞質に広がって観察される。一方、すべての変異において、変異STIM1/YFPレポーターは、細胞表面にタイル状の非常に強い蛍光を与えて、aggregationを形成しているものと考えられた。また、STIM1の細胞質内ドメインの変異(Glu249Lys およびArg304Trp)については、細胞内ドメインのaa.233-685(N末にランタン結合サイトを、C末にBODIPY-FL結合サイトを導入したもの)を発現させ、N末に配位したTbからC末BODIPY-FLへのFRETを測定した。野生型STIM1ドメインに加え、変異をもつドメインでは、FRETの減少が観察された。このことから、変異型は、野生型で従来考えられている曲折した構造をとらないことがわかった。このため、常にSTIM1が活性化しているものと思われた。 ORAI1優性変異をもつマウスを作製した。初代培養線維芽細胞にて、SOCEが恒常的に起こっていることを確認した。この細胞に対してpCMV G-CEPIA1erを導入して小胞体内のカルシウム濃度を測定した。その結果、小胞体内の蛍光レベルは、細胞外液によらず、野生型と全く変化がなく、一定に保たれているものと考えられた。若齢ORAI1優性変異マウスの筋病理では、際立った変化は見出されなかった。また、明確な細管集合体の形成も見られなかった。 GFPT1患者におけるSTIM1/ORAIの糖鎖の変化をウエスタンブロットで解析した。しかしながら、正常コントロールと比較して変化はみいだされなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していたモデルマウスの作成が遅れたこと、また、このマウスは細胞実験では患者細胞の表現型を示すものの、骨格筋の病理は患者ほどに進まないため、細管集合体形成の分子メカニズムの解析に、モデルマウスの骨格筋組織を用いて進むことができない状況である。 患者細胞とともに、モデルマウスの培養細胞をもちいた実験を展開できることは大きな収穫であり、また、他の研究計画はほぼ、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
新たに、STIM1またはORAI1に遺伝子変異を見出した患者について、患者細胞を用いて、または、遺伝子変異を導入したSTIM1/ORAI1コンストラクトをHEK細胞に導入して、細胞外から細胞内へのカルシウムの流入を蛍光カルシウムプローブを用いて測定する。また、STIM1の変異については、STIM1/YFPレポーターによるSTIM1のアグリゲーションのよる活性化を測定する。 優性変異STIM1変異マウスを新たに作成し、その初代培養細胞における、上記カルシウム流入を測定する。また、週齢を追って、骨格筋における細管集合体の形成をモニターする。 ORAI1優性変異マウスについては、さらなる週齢を追って筋病理を解析する。また、ビタミンD投与を行い、投与マウスにおける骨格筋の収縮能と筋病理の増悪度を解析する。 GFPT1変異患者細胞にて、UDP-GlcNAc生合成経路の解析をおこなう。GFPT1活性測定の最適化とSTIM1分子の活性化を測定する。 正常骨格筋細胞へtestosteroneを投与する。その時にSOC開口の有無、STIM1の活性化を解析する。また、変異ORAI1を導入した骨格筋細胞でも同様の処理を行い、SOC開口に対する相乗効果を解析する。SOCの開口が見られた場合には、骨格筋細胞でのtestosteroneから誘導されるandrogen受容体シグナル伝達経路の解析や骨格筋細胞表面でのORAI1へのtestosterone結合について解析する。
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