研究課題
高脂肪食負荷肝臓特異的IRS-1 欠損マウスでは耐糖能異常、インスリン抵抗性が認められ、、ピルビン酸負荷試験を実施したところ、著明な高血糖を呈していた。この結果から高脂肪食負荷肝臓特異的IRS-1 欠損マウスではでは、肝糖新生が亢進していると考えられた。実際、糖新生にかかわるPEPCKやG6Paseの発現はコントロールマウスに比し有意に増加していた。一方で肉眼的所見や組織切片を用いたHE染色/Oil-red-O 染色、さらに肝臓中のTG含量測定の結果から、肝臓特異的IRS-1 欠損マウスでは明らかに脂肪肝、脂肪蓄積が抑制されていることが明らかとなった。インスリンシグナルによって調節されていることが知られているSREBP1c、ACC、FAS、SCD-1といった遺伝子の発現は両群間で差は認められなかったが、PPARγ、FSP27、CD36 などの発現が有意に低下しており、これが高脂肪食負肝臓特異的IRS-1欠損マウスで脂肪肝を呈さなかった原因の一つと考えられた。さらに肝臓特異的IRS-1 欠損マウスの肝臓を門脈側、中心静脈側に分けて解析し、それぞれの領域におけるIRS-1、IRS-2 の発現を確認するとともにインスリンシグナルの状態を検討したところ、IRS-2の発現は両領域において著減しており、両領域におけるIRS-1の欠損と相まって、門脈側・中心静脈側いずれにおいてもインスリンシグナルの減弱(リン酸化Aktの低下)が認められた。この結果から、高脂肪食負荷肝臓特異的IRS-1 欠損マウスでは門脈側、中心静脈側いずれにおいてもIRS-1/IRS-2 の発現が極端に低い状態と考えられ、門脈側のインスリン作用障害の結果、高血糖を呈する一方、脂肪肝は脂肪合成が低下する結果、むしろこれが改善していたと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初平成27年度の目標に掲げていた、肝臓特異的IRS-1 欠損マウスを用いて高脂肪食負荷時の肝臓におけるIRS-1 の病態生理的役割について概ね解析ができたため。
高脂肪食負荷時の肝臓におけるIRS-2 の病態生理的役割について、肝臓特異的IRS-2 欠損マウスを用いて検討する。具体的には、肝臓特異的IRS-2欠損マウスの耐糖能、インスリン抵抗性、脂肪肝の程度、肝中性脂肪含量などを検討するとともに、糖新生にかかわるPEPCK やG6Pase の発現、中性脂肪含量やde novo の脂肪酸合成、脂肪合成にかかわるSREBP1c、ACC、FAS、SCD-1、PPARγ、FSP27、CD36 などの発現について検討する。さらに肝臓特異的IRS-2 欠損マウスにおいて門脈側と中心静脈側におけるIRS-1やIRS-2 の発現を確認しつつ、各領域におけるインスリンシグナルを検証し、肝臓IRS-2の「選択的インスリン抵抗性」病態における役割の全貌を解明する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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