研究課題
平成28年度は平成27年度の欠損マウスの解析結果を踏まえて、2型糖尿病・肥満モデルにおけるIRSの役割について検討した。肝臓のIRS-1の発現は、2型糖尿病・肥満モデル動物であるob/obマウスにおいてもコントロールマウスとほぼ同程度に保たれていたが、この時のIRS-1にassociateするPI3キナーゼ活性、脂肪合成にかかわるSREBP1c、FASなどの発現を血中中性脂肪レベルと肝臓の中性脂肪含量と合わせて門脈側、中心静脈側に分けて検討し、ob/obマウスにおいてIRS-1にassociateするPI3キナーゼ活性が中心静脈側で増加し、脂肪合成が亢進していることを確認した。またコントロールマウス肝臓のIRS-1にassociateするPI3キナーゼ活性と同じ程度になるようにIRS-1のドミナントネガティブ変異体をアデノウイルスベクターをGSプロモーター下に発現させ、これによってob/obマウスで認められる高中性脂肪血症や脂肪肝が改善するかどうかを検討したところ、脂肪肝が改善する傾向が認められた。またこの時の全身・肝臓のインスリン抵抗性や血中インスリン値、耐糖能、グルコースクランプやピルビン酸負荷試験とともに、肝臓におけるIRS-2にassociateするPI3キナーゼ活性や、PEPCK、G6Paseの発現を門脈側、中心静脈側に分けて検討し、中心静脈側のIRS-1が脂肪合成に重要な役割を果たしていることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
2型糖尿病・肥満モデル動物における肝臓IRS-1の糖代謝・脂質代謝における病態生理的役割について検討することが平成28年度の目標であった。モデル動物を用いた解析、遺伝子変異体を用いた解析いずれも実行できており、概ね順調に進展していると考えられる。
平成29年度は最終年度を迎え、平静28年度までの解析結果を踏まえて、2型糖尿病・肥満モデル動物を用いて肝臓IRS-2の糖代謝・脂質代謝における病態生理的役割について検討する。我々は既にIRS-2の発現がob/obマウスの肝臓において顕著に低下していることを確認している。そこで、IRS-2をコントロールマウスと同じレベルにまでアデノウイルスベクターを使用して、肝臓全体にあるいは門脈側特異的(APCプロモーター下)に戻した時に、全身・肝臓のインスリン抵抗性、耐糖能異常が改善するかをまず検討する。さらにインスリン抵抗性や耐糖能異常の改善に伴い、血中インスリンの低下が予想されるが、この時肝臓におけるIRS-1にassociateするPI3キナーゼ活性、脂肪合成にかかわるSREBP1c、FASなどの発現を門脈側、中心静脈側で検討するとともに、肝臓の中性脂肪含量や血中中性脂肪値を測定する。
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