骨格筋特異的β2アドレナリン受容体欠損マウスの代謝表現型について解析を行った。本遺伝子欠損マウスでは、定常状態でも野生型マウスに比べて脂肪重量が増加していたが、トレッドミル連続運動負荷による脂肪組織重量の減少が抑制されることが明らかとなった。遺伝子変化の解析を含めた種々の検討から、この表現型は、運動時のエネルギー消費の抑制に起因すると考えられた。また、高齢のマウス、糖尿病マウスでは骨格筋のβアドレナリン受容体発現が低下し、下流のシグナル伝達も抑制されることが明らかとなった。また、トレッドミル連続運動負荷後に糖負荷試験を行ったところ、野生型マウスと比べて血糖に有意な差はなかったが、インスリン値が上昇しており、これは運動によるインスリン抵抗性の改善作用が減弱していたためと考えられた。
これらの表現型は、その程度も含め、PGC1α新規アイソフォームの代謝表現型に類似しており、運動時のエネルギー代謝制御におけるPGC1α新規アイソフォームの発現誘導とβ2アドレナリン受容体シグナルが密接な関係にあることが明らかとなった。また、骨格筋特異的β2アドレナリン受容体欠損マウスでは強度のトレッドミル運動負荷に対する耐容能の低下も認め、運動耐容能の点でも骨格筋のβ2アドレナリン受容体シグナルとPGC1α新規アイソフォームは、共役的な作用を持つことが明らかとなった。
また、骨格筋特異的KLF15欠損マウスを作成し、その代謝表現型を解析したが、PGC1α新規アイソフォーム欠損マウスや骨格筋特異的β2アドレナリン受容体欠損マウスとは異なり、定常状態では肥満や脂肪重量の増加を認めなかった。糖負荷試験でも耐糖能障害は見られず、KLF15の定常状態における代謝制御への関与は限定的と考えられた。
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