研究課題
アンドロゲンの生理的意義並びに生活習慣病創薬の観点から、抗メタボ作用を保持しつつ、前立腺刺激作用を認めない選択的アンドロゲン受容体修飾剤(SARM)・S42に関して以下の研究を行った。(1)新規SARM・S42の抗前立腺癌作用の検討:S42はヒト前立腺癌細胞株のLNCaP細胞の増殖を抑制した。その機序として、ARの転写活性の抑制に加えて、AR,IGF-1R,IRの発現抑制及びErk-MAPKのリン酸化の抑制機序を証明した。CAG-LucLNCaP細胞を播種したヌードマウスにS42を投与すると、腫瘍形成抑制効果が観察された。以上より、S42は、in vitro、in vivoにおける前立腺癌細胞増殖抑制作用が示唆された。(2)Late-onset hypogonadism(LOH)診療におけるAMSスコア、血中テストステロン(T)値の臨床的意義:我々は男性健診受診者を対象に種々のアンドロゲン指標のうち、総T値がメタボ診断の最も優れたバイオマーカーとなり得る可能性を報告した(EJ 2015)。一方、加齢に伴うTの低下はLOHという病態で知られ、中高年男性におけるうつ、性欲低下等の症状のみならず、肥満、骨粗鬆症などを包括する病態として理解されている。このLOHの診断には、AMSという問診票が世界標準として使われている。我々は、241名の男性健診者を対象に、AMSの意義について検討したが、AMSの総スコアは、種々のT指標とは全く関連を認めず、インスリン抵抗性指標のHOMA-Rと有意の相関性を示し、中等度以上のLOH重症度を検出する因子として、多変量解析でHOMA-R>2.5は検出された。AMSはCRPとも関連性を示すことから、インスリン抵抗性の背景にあるlow grade inflammationを反映している問診票であることを明らかにした(Endocrine J, 2017)。
2: おおむね順調に進展している
研究を細胞実験、動物実験、ヒト臨床研究を並行して行い、多面的に展開している。肥満、糖尿病モデルにおける研究の概括的データはほぼ出揃っているが、詰めのデータの遅れで、論文化にやや時間がかかっている(本年度中の投稿は可能)。S42による細胞増殖抑制効果に関しては、順調に研究が進み、既に投稿済みである。また、ヒト臨床研究は上記のように成果も出て、論文化も順調である。今後も筋肉へのS42の効果に関する研究が進行中であり、さらなる成果が期待される。
創薬研究であり、種々の生活習慣病モデルマウス等で、再現性や薬効の違いの有無に関しても十分な検討が重要と思われる。また、S42の作用機序として、マイクロアレイの解析結果からもアンドロゲン受容体を介した作用のみではないと想定され、新たな標的分子の探索も視野に入れている。人員、器機等、本研究プロジェクトを推進していく上で大きな支障は現時点ではない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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