研究課題
骨髄異形性症候群(MDS)には100種類以上の遺伝子変異が報告されており、発症機序は不明である。本研究の目的はエピジェネティクス関与する分子(ASXL1とEZH2)の変異によるマウスモデルを樹立して、発症機序の一端を明らかにした。EZH2はヒストンH3K27のメチレースであるが、酵素活性を欠くEZH2-dSETを発現した骨髄細胞の移植でマウスにMDS様の疾患が発症した。このMDS細胞ではHoxA9の脱抑制は認められなかったが、ABCポンプファミリーの幾つかの発現がH3K27me3の低下によって脱抑制していた。中でも造血幹細胞マーカーであるABC-G2の発現はMDS患者サンプルでも特異的に高いことが判明した。興味深いことにABC-G2過剰発現のみでMDSが発症すること、このMDS細胞のエクソソームが骨髄ストローマ細胞のオステオブラストへの分化を抑制して、このことが正常造血が著しく抑制することを明らかにした。ヒストン修飾に関わるASXL1のC末欠失変異(ASXL1-MT)は各種ミエロイド系腫瘍に認められるが、ASXL1変異がある症例は予後が悪い。また、一見健康な高齢者に認められるクローン性造血でも高率に認められることが判明した。ASXL1-MTを過剰発現した骨髄細胞を移植したマウスではHoxA9とmiRNA125aの発現が脱抑制することによってMDSが発症することを以前報告したが、Runx1変異やSETBP1変異と組み合わせることによってMDS/AMLが発症することを明らかにした。一方、ASXL1-MTをRosa26にノックインして造血系だけに発現したマウスは1年以降に大球性の軽度貧血と好中球の軽度形態異常が認められ、前MDS状態を呈した。ChIP解析でASXL1がH3K4me3と強く相関すること、ASXL1-MTによってH3K4me3が抑制されることを明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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