平成28年度は、ニッチ細胞特異的ビタミンD受容(VDR)欠損マウスの in vivo 解析、野性型マウスを用いたFGF23の体内での変動、FGF23遺伝子改変マウスの作製を行った。まず、ニッチ細胞特異的VDR欠損マウスについて、DMP-1-Cre や Osx-Cre マウスと VDR floxマウスとの交配で、骨細胞特異的ないしは骨芽細胞特異的VDR欠損マウスを作製した。これらのマウスの定常状態での末梢血血球数に異常はなく、G-CSF投与にても造血幹前駆細胞の動員効率に明らかな異常はみられなかった。これらのマウスの未分化造血細胞におけるSca-1 の発現が減弱している個体がみられたが、通常の発現をしているマウスもあり、この理由は我々のこれまでの検討では分かっていない。次に、野性型マウスを用いた生体内 FGF23 の変動についての検討において、G-CSF投与により骨髄中のFGF23 mRNA が上昇することが明らかとなった。これはELISAを用いて骨髄細胞外液を測定しても同様で、定常状態では測定感度以下であるものが G-CSF 投与により測定できるようになり、投与回数を重ねるごとに上昇傾向にあった。現在、この現象の再現性の確認と、G-CSF投与時の骨髄でのFGF23産生細胞が、従来言われている骨細胞かどうかの検討を行っているところである。ゲノム編集で新しく作成したFGF23 large deletion マウスは生後3-4週齢から発育が不良となる。このマウスの造血システムを解析中であるが、現在までのところ4-5週齢の若いマウスでは明らかな異常を認めていない。同時にFGF23 flox マウスを用い、骨細胞特異的FGF23欠損マウスの作製を進め実際の目的のマウスが得られはじめたところであり、造血システムの解析を開始している。
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