骨髄性腫瘍の共通微小欠損領域(7q21.3サブバンド)から単離されたSamd9およびSamd9L遺伝子(Samd9/L)は、初期エンドソーム蛋白質をコードするが、Samd9L遺伝子のハプロ欠損マウスはMDSを高率に発症することから、7番染色体欠失の責任遺伝子候補である。近年Samd9/L遺伝子の機能獲得型変異が、MIRAGE症候群など造血不全を伴う優性遺伝疾患(多臓器先天異常)や、先天性骨髄不全症候群、家族性モノソミー7症候群、孤発例の小児MDSにおいて多数報告された。これらの乳幼児ではモノソミー7を伴うMDSを高頻度に発症するが、MDS細胞において常に変異側のアレルが欠失することから、変異遺伝子を失うことによりSamd9/Lの機能促進に起因する造血細胞の機能不全から回復する"revertant mosaicism"のメカニズムが提唱されている。われわれはSamd9/L変異遺伝子の造血における機能を精査するために、Samd9/L遺伝子の機能獲得型点変異を有するモデルマウスを作製した。マウスは体重が正常同胞の60%程度と低体重で、貧血や泌尿器・生殖腺の先天異常など、MIRAGE症候群と共通する症状を呈した。変異マウスの貧血は小球性低色素性貧血で、離乳時にHb 9 (g/dL)程度であったものが、その後徐々に回復する点などMIRAGE症候群に酷似する。骨髄細胞のFACS解析では、好塩基性赤芽球に相当するCD71hi/Ter119hiの段階で分化障害が認められた。単純な鉄欠乏性貧血や鉄吸収障害は考えにくく、エンドソーム機能異常によるトランスフェリン受容体の代謝異常、特にリサイクル異常に伴う鉄吸収障害を念頭に、胎仔肝や乳仔期骨髄を材料にさらなる解析を進めている。
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