研究課題
正常造血をニッチ細胞が制御する機序を明らかにするために、細動脈性、骨髄洞性ニッチを構成する間葉系幹細胞を各々標識するマウス(NG2-creERTM、レプチン受容体Lepr-creマウス)と2つの主要なニッチ因子であるCXCL12 flox、stem cell factor (SCF) floxマウスを解析した。この結果、細動脈周囲のNG2陽性間葉系幹細胞は、造血幹細胞の維持に寄与し、骨髄洞周囲のレプチン受容体陽性細胞は、造血幹細胞の抹消への誘導を制御していることが明らかとなった。このように、新イメージング技術とコンピューターシュミレーションを組み合わせることにより、細動脈ニッチと骨髄洞ニッチを構成する間葉系幹細胞が異なるサイトカインの産生を介して造血幹細胞を制御するというメカニズムを解明し、Nature Cell Biology誌に発表した。更に、腫瘍細胞微小環境を単細胞レベルで解析をするために、短時間で効率的な細胞処理、ノイズの少ない単細胞レベルの遺伝子解析技術であるDrop-seq(単細胞遺伝子発現解析システム)を導入した。本システムを用いて、骨病変を来す代表的な造血器腫瘍である多発性骨髄腫モデルマウスの骨芽細胞と間葉系幹前駆細胞のシングルセル遺伝子発現解析を行い、t-Distributed Stochastic Neighbor Embedding(tSNE)解析法にて、両細胞が別々の集団として識別される結果を得ている。また、Similarity Metric解析を行ったところ、骨髄腫の骨髄浸潤が進行するにつれ、骨芽細胞よりむしろ間葉系幹前駆細胞に有意な変化が認められ、シングルセル解析が未知の造血器腫瘍における骨髄微小環境の変化の同定に有用であることが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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