多発性筋炎(PM)の筋傷害において細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が重要な役割を担う。しかし、筋細胞傷害に関与するCTL由来の細胞傷害分子や筋細胞の細胞死の様式は不明であり、その解明は非特異的免疫抑制を越えて病態特異的な治療法の開発に繋がると考えられる。本年度の研究課題ではCTLによって引き起こされる筋細胞死の機序の解明を目的とした。 方法としては、C2C12細胞にOVAペプチドとMHCクラスI分子(H2Kb)を遺伝子導入しH2KbOVA発現筋芽細胞を作成し、筋管細胞(H2KbOVA発現筋管細胞)に分化させた。これらの細胞とOT-Iマウス脾細胞由来のOT-I CTLとを共培養した。 先ず、51Cr放出アッセイでOT-I CTLによるH2KbOVA発現筋芽細胞とH2KbOVA発現筋管細胞の傷害を確認した。パーフォリン1やグランザイムB欠損OT-I CTLとの共培養で筋芽細胞の細胞死は抑制されたが、筋管細胞では抑制されなかった。可溶性FasによるFas Ligand阻害で筋管細胞の細胞死は抑制された一方で、筋芽細胞では抑制されなかった。アネキシンVとヨウ化プロピジウムを用いた細胞死イメージングとterminal deoxynucleotidyl transferase nick-end labeling (TUNEL) 法による解析では、アポトーシスの特徴が筋芽細胞の細胞死において認められたが、筋管細胞の細胞死では認められなかった。筋芽細胞の細胞死はカスパーゼに対する阻害薬で抑制されたが、筋管細胞の細胞死はネクロトーシスの阻害剤であるネクロスタチン1にて阻害された。以上より、筋芽細胞の細胞死はアポトーシスであり、筋管細胞の細胞死はネクロトーシスであると考えられた。ネクロトーシスの阻害が、多発性筋炎に対する新たな治療戦略になると可能性が考えられる。
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