研究課題
本研究では、樹状細胞、T細胞、B細胞、マスト細胞の各々で選択的に概日時計(時計遺伝子)が障害されたマウスを作成し、これらのマウスに喘息、花粉症、食物アレルギーモデルを導入し正常マウスと比較することでそれぞれのアレルギー性疾患の病態形成において個々の免疫細胞の概日時計が果たす役割を解明する。平成27年度からCre-loxpシステムを用いてCD11c-Cre, CD4-Cre, CD19-CreマウスとBmal1flx/flx マウスを交配させ樹状細胞、CD4陽性T細胞、B細胞で主要な時計遺伝子の1つBmal1が欠損したマウスを作成している。現時点でT細胞でBmal1が欠損したマウスで実験に供する引数を得ることができた。このマウスでは、定常状態において体重や皮膚の異常等、胸腺や脾臓へのリンパ球サブセット、血中IgGなどの抗体濃度、末梢血白血球数などに異常は認めていない。平成28年度はこのT細胞でBmal1が欠損したマウスにおいて喘息モデルを導入しコントロールマウスと比較検討した。その結果卵白アルブミン(OVA)を腹腔内感作しOVAを吸入する喘息モデルではコントロールマウスと比較して有意なフェノタイプの差や免疫学的な相違は認めず少なくともこのモデルにおいてはT細胞のBmal1欠損(概日時計の異常)は喘息の発症に影響を与えないことが示唆された。現在、ダニ抗原を吸入感作する喘息モデルを作成しコントロールマウスとの相違について検討中である。
2: おおむね順調に進展している
初年度はマウスの作成、次年度はそのアレルギーモデルを用いた解析を施行する計画だったのでとくに遅延なく進んでいる。
上記で作成した免疫細胞選択的Bmal1改変マウスおよびそのコントロールマウスが実験に使用可能な匹数が揃えば、適宜、ダニ抗原を吸入感作して作成する喘息モデルを導入し、そのフェノタイプについて比較検討する。評価項目として、肺好酸球浸潤、気道過敏性、BAL中Th2サイトカイン, TSLP, IL-33濃度、局所リンパ節におけるT細胞応答、血清抗原特異的IgE, IgG値などを用いる。本検討によってより臨床に近似した形での喘息モデルを用いた喘息病態形成における個々の免疫細胞の概日時計が果たす役割が明らかになる。また並行して野生型マウスまたは時計遺伝子Clock変異マウスの骨髄細胞をin vitroで分化させ骨髄由来培養マスト細胞(BMMCs)を調整し、このBMMCsをそれぞれマスト細胞欠損マウス(W/Wvマウス)に静脈内注射し全身的なマスト細胞の再構築を行っている。それらのマスト細胞選択的にClock遺伝子が変異したマウス及びコントロールマウスに上記のダニ抗原による喘息モデルを導入しマスト細胞の概日時計が喘息病態の形成に果たす役割についても今後検討する。
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