もやもや病は両側内頸動脈終末部の閉塞と異常側副血管網形成による脳虚血・出血を特徴とする疾患で、約半数は幼児期・学童期の発症である。本症は我が国で疾患概念が確立し、頻度も高く、特定疾患に指定されている。現在の治療は、脳動脈再建術手術であり、虚血による神経障害の改善に有効性が示されている。脳卒中発作の前に診断し、早期介入すれば、神経学的予後は向上すると考えられる。実際に、脳ドック等で診断される無症候性もやもや病の治療予後は良い。申請者らは、全ゲノム関連解析により17番染色体に存在するRNF213がもやもや病感受性遺伝子であることを明らかにした。更に、RNF213遺伝子解析により患者の73%に共通な創始者変異(多型)c.14576G>Aを見出し、この変異を持つことで発症リスクが190倍に上昇する事を報告した。多数のRNF213遺伝子変異を解析した結果,この高頻度創始者変異c.14576G>Aのホモ接合体はヘテロ接合体に比べ,4歳未満の早期発症者が多く、一過性脳虚血発作(TIA)よりも重篤となる梗塞で発症する症例が多く、予後に関連することを示した。東北メディカル・メガバンク計画の成人コフォート登録者のうち、高解像度(3テスラ)MR装置を用た頭部MRI/MRA検査を受けたコホート参加者が既に7000名を越えており、この中でRNF213遺伝子のc.14576G>A変異保有者を抽出した。一方、c.14576G>A変異を持たない同数のコホート参加者を対照として、両群の頭部MRI所見を検討したところ、微細な所見の差異を多数見出した。これらの差異を利用し、もやもや病発症者に認められる頭部MRI検査上の初期変化のなかから、発症予知に有用な所見の選定を行っている。また変異保有者の血症メタボローム解析データも集積しており、頭部MRIとメタボローム解析を組合わせ、より効率的な発症前予測を検討した。
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