研究課題
急性脳症の病態生理を神経、免疫、代謝のクロストークという観点から解明する目的で、急性脳症患者における神経、免疫、代謝に関連する候補遺伝子の多型解析およびリスク遺伝子型の機能解析を行った。本年度はEphrin, Ephrin受容体、S1P (sphingosine-1-phosphate)などの候補因子に関する解析を開始し、予備実験を行った。けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)については、その病初期には熱性けいれん(FS)重積と区別できないため、AESD、FS、対照の3群間の比較検討を行った。本年度は自然免疫抑制因子であるCTLA4 (cytotoxic T-lymphocyte antigen 4)の 3’末端の1塩基多型(CT60)に注目して遺伝子解析を行ったところ、AESDと正常対照の間、およびAESDとFSの間に遺伝子型頻度の有意差が見いだされた。リスク遺伝子型であるCT60/GG遺伝子型はCTLA4発現の減少と関連し、中枢神経系ではリポ多糖(LPS)による炎症性サイトカインIL1B発現を亢進させる可能性がある。FS とAESDの病態の相違をもたらす遺伝子素因として、自然免疫系の過剰な賦活が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
急性壊死性脳症(ANE)は近年、日本における発症頻度がきわめて低くなっており、新しい症例の検体の収集が計画どおりには進まなかった。けいれん重積型急性脳症(AESD)については、当初の計画に入っていなかったCTLA4遺伝子に関する新知見が得られたことにより、計画以上に進展した。
次年度は、Ephrin, Ephrin受容体、S1Pに関する解析を継続する。また本年度の成果をさらに発展させるため、CTLA4に関する機能解析を新たに追加する。
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