研究実績の概要 |
急性脳症の病態生理を神経、免疫、代謝のクロストークという観点から解明する目的で、急性脳症の3大症候群である急性壊死性脳症(ANE), けいれん重積型急性脳症(AESD), 脳梁膨大部脳症(MERS)における神経、免疫、代謝に関連する候補遺伝子の多型解析及びリスク遺伝子の機能解析を行った。 ANEに関しては、前年度にHLA遺伝子タイピングを行い、疾患感受性遺伝子素因としてHLA-DRB1*09:01、DQB1*03:03及びA*31:01を同定したので、これを論文として公表した。また自然免疫を調節するTLR3について、以前に報告された点変異F303SがあるかANE31症例で検討したが、認められなかった。 AESDに関しては、自然免疫抑制因子であるCTLA4の3’末端の1塩基多型CT60についてAESD(87例)、熱性けいれん(54例)、健常者(186例)を解析したところ、AESDと他の2群との間にアレル頻度の有意差を認めた。FSと異なるAESDの病態として、自然免疫系の賦活が示唆された。 MERSに関しては、AESD、ANEなど重症の病型との関連が報告されていたミトコンドリア酵素CPT2の熱感受性多型についてMERS40例で検討したところ、健常者との間に頻度の有意差を認めた。代謝異常の所見を示さないMERSの病態にもエネルギー代謝の異常(発熱時におけるATP産生の低下)が関与することが示された。 以上より急性脳症の3大症候群の病態に代謝(ミトコンドリア代謝)と免疫(自然免疫、サイトカイン)に関わる遺伝的素因の関与が明らかとなった。
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