研究課題/領域番号 |
15H04874
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小池 健一 信州大学, 医学部, 特任教授 (40143979)
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研究分担者 |
中沢 洋三 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60397312)
重村 倫成 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (70623916)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | iPS細胞 / ゲノム修飾 / 先天性好中球減少症 / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
1)ELANE変異を有する重症先天性好中球減少症(SCN)患者の末梢血T細胞にOct3/4, Sox2, Klf4, c-MycのcDNAをセンダイウイルスによりtransfectし、iPS細胞を作製した。 2)A549細胞株を用いてZFNによる遺伝子改変の検討を行った。ピューロマイシン添加培養液で培養開始後、約2週間でA549細胞のコロニーが形成された。各コロニー細胞から抽出したゲノムDNAを用いたPCR法を行った結果、A549細胞の適切な遺伝子座位でドナープラスミド配列への置換が確認された。 3)昨年度樹立したPTPN11変異を有する若年性骨髄単球性白血病(JMML)患者由来のiPS細胞を用いてgene editingを検討した。MEF上で維持・培養したiPS細胞をReproFF2培地へ移しMEF非存在下で培養した。約1週間後に、iPSコロニーを回収し、TrypLE Selectを用いて処理を行った後に、ヌクレオフェクション法でドナーベクターとZFN発現ベクターを同時に核内導入し、1日培養後にピューロマイシンを添加し培養した。2週間後に形成された各コロニー細胞から抽出したゲノムDNAを用いてPCR法を行った結果、該当遺伝子の適切な座位でドナープラスミド配列への置換が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ELANE変異を有するSCN患者の末梢血T細胞からiPS細胞を作製した。 2)A549細胞株を用いてZFNによる遺伝子改変を検討した結果、適切な遺伝子座位でドナープラスミド配列への置換が確認できた。 3)iPS細胞から造血幹細胞への分化においてもgene editingが可能かを検討するため、細胞増殖能が高いJMML患者由来のPTPN11変異を有するiPS細胞を用いた。樹立したJMML-iPS細胞をMEF上からReproFF2培地へ移しMEF非存在下で培養したところ、該当遺伝子の適切な座位でドナープラスミド配列への置換が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は以下の研究を遂行する。 1)SCN患者の末梢血T細胞から樹立したiPS細胞を用いて、ELANE遺伝子変異を修復・非修復のiPS細胞からの造血幹細胞-好中球分化の差異を検討する。CD34陽性細胞におけるCD45, CD38, CD33, c-kitなどの表面マーカーをフローサイトメトリーで解析し、メチルセルロースによるコロニー形成能を調べる。また、好中球系への増殖分化能も比較検討する。 2)約20%のSCN患者で見られる骨髄異形成症候群(MDS)・急性骨髄性白血病(AML)は本症患者にとっては重大な合併症である。このため、G-CSF receptor (G-CSFR)変異 +/- RUNX1変異をSCN-iPS細胞に導入し、CD34陽性細胞の増殖分化能を正常iPS細胞と比較し、MDS・AMLの発症メカニズムを解析する。SCN-iPS細胞、G-CSFR変異(+)SCN-iPS細胞、RUNX1変異(+)SCN-iPS細胞、G-CSFR変異(+)RUNX1変異(+)SCN-iPS細胞から導入されるCD34陽性細胞数を比較する。次いで、これらのCD34陽性細胞の低濃度~至適濃度のG-CSFに対する増殖応答や産生される好中球の数的・質的差異を比較する。
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