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2016 年度 実績報告書

蛋白寿命タイマーによる小児期遺伝性疾患の治療薬開発

研究課題

研究課題/領域番号 15H04878
研究機関自治医科大学

研究代表者

小坂 仁  自治医科大学, 医学部, 教授 (90426320)

研究分担者 井上 健  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第二部, 室長 (30392418)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード白質形成不全 / フォールディング / シャペロン / 小胞体ストレス
研究実績の概要

小児期遺伝性神経疾患のおよそ半分は、アミノ酸変異による蛋白構造不全が原因となる。正常な構造が獲得されないため(折れたたみ不全)、小胞体・ゴルジ品質管理機構により小胞体にとどまり、細胞膜や、ライソゾームなどの細胞内小器官に到達できず、蛋白が機能を失い発症する疾患が多い。折れたたみ不全を解消し、小器官への輸送を促す化合物を見出すことができれば、小胞体に変異蛋白がとどまることにより惹起される小胞体ストレスも減じることから、有力な薬物候補となる。近年、原因蛋白のアミノ酸変異による折れたたみ不全を解消し、小器官への輸送を促す化合物あるいは薬理学シャペロンの概念が生まれ、研究が進み一部は臨床治験にまで進んでいる。原因蛋白が受容体(vasopressin type 2 受容体、gonadotoropin releasing hormone 受容体など)や、酵素の場合、膜に出現した変異蛋白に対して、放射性同位元素でラベルしたアゴニストに対する競合阻害や、細胞質あるいはライソゾーム内酵素活性上昇を指標による薬物スクリーニング方法が開発されてきた。しかしながら多くの蛋白は、受容体や酵素のように特定の結合部位を持たず、またチャネル活性や酵素活性のような機能を測定する方法がない。現在Pelizaeus-Merzbacher disease(PMD)の原因であるPLP1蛋白の構造不全による、不安定性あるいは小胞体関連分解と蛋白構造変化による局在変化に着目し、スクリーニング系を確立し、小児期遺伝性神経疾患の治療薬を開発している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Pelizaeus-Merzbacher diseaseの原因であるPLP1蛋白の正常型と変異型での発現様式をCOS, HEK, SHSY5Y細胞で検討したCOS細胞では細胞内分布の差異(正常型;びまん性分布、変異型;核周囲)の差異が見やすかったが、蛋白発現量が少ない。またSHSY5Y細胞は蛋白発現が少ないためHEK細胞を用いることにした。PLP1-A242V安定発現細胞株を作成し、それぞれでの蛋白発現を確認したのち、最も蛋白発現量の大きなクローンを選択、96ウェルフォーマットを用いて薬剤を反応させ、得られた蛍光強度および局在の変化をIn Cell Analyzerで比較解析した。現在までに数種類の薬剤について添加後の蛍光強度上昇が得られ、再現性も確認された。細胞局在変化に関しては、In Cell Analyzerでは、解析精度が充分でないため、共焦点光学顕微鏡を用い画像を取得したのち、局在評価を行っている。

今後の研究の推進方策

PLP1変異体では、重症変異では、小胞体関連分解により半減期が短くまた小胞体、ゴルジにとどまりやすため、蛋白のフォールディングを助けることにより、膜への移行を促進し蛋白分解を妨げる薬剤を変異型PLP1を恒常発現する細胞株を用いた薬剤スクリーニングにより、現在3つの候補薬を得た。これらの薬剤が小胞体ストレス応答を含めた、遺伝子発現解析や、細胞死に与える影響を検討し、最も有望な薬剤をPlp1-A242Vを有するモデルマウスに投与し、症状改善作用が認められるか否かを、今後検討する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)

  • [雑誌論文] A splicing mutation of proteolipid protein 1 in Pelizaeus-Merzbacher disease.2016

    • 著者名/発表者名
      1.Omata, T., Nagai,J., Shimbo,H., Koizume,S., Miyagi,Y., Kurosawa,K., Yamashita,S., Osaka,H., Inoue,K
    • 雑誌名

      Brain Dev.

      巻: 38 ページ: 581-8

    • DOI

      10.1016/j.braindev.2015.12.002

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The magnetic resonance imaging spectrum of Pelizaeus-Merzbacher disease: A multicenter study of 19 patients.2016

    • 著者名/発表者名
      2.Sumida, K., Inoue,K., Takanashi,J., Sasaki,M., Watanabe,K., Suzuki,M., Kurahashi,H., Omata,T., Tanaka,M., Yokochi,K., Iio,J., Iyoda,K., Kurokawa,T., Matsuo,M., Sato,T., Iwaki,A., Osaka,H., Kurosawa,K., Yamamoto,T., Matsumoto,N., Maikusa,N., Matsuda,H., Sato,N.
    • 雑誌名

      Brain Dev.

      巻: 38 ページ: 571-580

    • DOI

      10.1016/j.braindev.2015.12.007

    • 査読あり / 謝辞記載あり

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公開日: 2018-01-16  

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