研究課題/領域番号 |
15H04879
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大沼 圭 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10396872)
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研究分担者 |
森本 幾夫 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (30119028)
岩尾 憲明 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00309139)
岩田 哲史 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (00396871)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性GVHD / CD26 |
研究実績の概要 |
[1] ヒト免疫化慢性GVHDマウス及びヒトIL26TgマウスにおけるIL-26とCD26共刺激の役割を解明した。すなわち、申請者が樹立した慢性GVHDを発症するヒト免疫化マウスモデルを利用して、さらに詳しい慢性炎症の分子病態を行った。このモデルは、皮膚や肝、肺など多臓器にヒトT細胞が浸潤し、臓器の線維化を示した。浸潤したCD4T細胞を純化して炎症性サイトカインのプロファイルをマイクロアレイで解析したところ、共刺激分子CD26とともに、IL-10ファミリーに属するIL-26が高発現していることを発見し、in vitro実験では、IL-26は特異抗体及びナチュラルリガンドのcav-1によるCD26共刺激で高発現し、CD28共刺激では分泌されないことを示した。CD4T細胞を活性化するCD26共刺激シグナルの分子メカニズムと新規炎症性サイトカインIL-26の細胞生物学的な意義をin vivoで解明し、CD26+CD4T細胞の浸潤によって引き起こされる慢性炎症・臓器線維化とその臓器障害の病因病態を明らかにした。これにより、炎症の慢性化に関わる分子メカニズムが解明でき、治療標的分子を明らかにできた。 [2] CD26共刺激リガンドのcav-1を標的とした慢性GVHDに対する新規分子標的療法の開発を行うため、慢性GVHDマウスを用いてCav-Ig或いはCD26抗体の投与量と投与時期、投与期間を変えて、最適の予防及び治療投与方法を明らかにした。これにより、慢性GVHDの予防的投与のプロトコールの確立とともに、発症後の投与でも慢性炎症の抑制が充分可能かどうか明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書年度は、当初の予定通り、モデルマウスを用いた実験成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
[1] 放射線照射とシクロフォスファミド投与したHLAハプロタイプの異なるレシピエントマウスにIL26Tgマウスの脾臓細胞と骨髄細胞を移植するadoptive transferの系により、皮膚、腎臓、肺の炎症、線維化を病理学的に解析する。これにより、CD26+IL-26+CD4T細胞の機能と慢性GVHD病態との関係、及び、慢性GVHD病態のCD4T細胞におけるCD26共刺激独自のシグナル伝達経路を明らかにする。また、ヒト免疫化慢性GVHD及びヒトIL26TGマウスの脾臓細胞を分離し、CD26及びIL-26による濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)と自己反応性B細胞の活性化を実証する。これにより、CD26のシグナルによる慢性GVHD病態でのTfhと自己反応性B細胞活性化の分子メカニズムを明らかにすることができ、その結果、炎症の慢性化を制御するCD26関連治療標的分子を明らかにする。 [2] cav-1ノックアウト(KO)マウス、CD26-KOマウス及びヒトCD26Tgマウスを利用したadoptive transferの系で、[1]と同様に慢性GVHDを惹起し、病理組織解析、炎症浸潤リンパ球のサブセットやサイトカイン発現解析を行う。これにより、慢性GVHDにおけるCD26、IL-26、cav-1の重要性を実証する。平成27年度に確定した至適投与量のプロトコールを適用して、慢性GVHDマウスの肺や皮膚の炎症・線維化が充分に予防及び治療できているか病理組織学的に解析する。同時に、マウス血清中のヒトIL-26の経時変化をELISAで測定して、慢性GVHDの重症度とIL-26の相関を証明する。また、肺、皮膚、肝臓に浸潤したヒトT細胞のサブセットをフローサイトメトリーで解析し、発症時と抑制時のCD26の発現や浸潤した標的臓器間でCD26の発現やサブセットに違いが認められるかを明らかにする。
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