研究課題
請者が樹立したヒト慢性炎症のモデルとなるヒト免疫化マウスを用いて、慢性移植片対宿主病(GVHD)の病因、及び、慢性GVHDによる慢性閉塞性肺疾患様の肺障害、及び、皮膚硬化等を引き起こす慢性炎症及び組織線維化の分子メカニズムを解明した。[1] 慢性炎症におけるIL-26の役割を解明するため、ヒトIL-26遺伝子を導入したTgマウスを用いた。放射線照射とシクロフォスファミド投与したHLAハプロタイプの異なるレシピエントマウスにIL26Tgマウスの脾臓細胞と骨髄細胞を移植するadoptive transferの系により、皮膚、腎臓、肺の炎症、線維化を病理学的に解析した結果、CD26+IL-26+CD4T細胞の機能と慢性GVHD病態との関係、及び、慢性GVHD病態のCD4T細胞におけるCD26共刺激独自のシグナル伝達経路を明らかにした。[2] 慢性GVHDの予防と治療においてはCD26抗体よりもリガンドを用いてCD26・cav-1相互作用をブロックするほうが何故効果的なのか分子細胞生物学的に解明するため、慢性GVHDマウスを用いてCav-Ig或いはCD26抗体の投与量と投与時期、投与期間を変えて、最適の予防及び治療投与方法を明らかにした。慢性GVHDに対する効果判定は、Cookeの臨床スコアー(Cooke KR et al., Blood 1996)の改善、及び、生存期間延長を指標とした。[3] 慢性GVHD患者の検体(皮膚、肺組織)を用いてCD26やそのリガンドcav-1、及びIL-26の発現を解析した。さらに、慢性GVHDの治療や症状の経過との関連についても、臨床情報を分析した。その結果、GVHDの障害臓器や部位、治療経過などによるCD26陽性リンパ球プロフィールの差異を分子細胞レベルで明らかにできた。
2: おおむね順調に進展している
計画に準じた成果が得られている。
[1] これまでにに同定したCD26下流の関連分子について、CD26陽性H9或いはJurkat T細胞株を用いてRNAi実験を行い、慢性GVHDにおけるCD26共刺激分子特異的メカニズムを実証する。[2] B細胞については、脾臓細胞からTfhとB細胞を分離し、Tfh-B細胞機能のシグナル分子への影響をin vivoモデルで解明する。また、マウス血中のヒトIgG型核抗体を定量してCav-Igの治療効果を証明する。更に、慢性GVHDを予防或いは治療できたマウスに生着したヒトリンパ球を分離して、別のNOGマウスに連続移植し、in vitroで示したCav-Igによるアナジー誘導をin vivoで解析し、Cav-Igによる免疫寛容誘導の分子メカニズムをin vivo実験で証明する。一方、Cav-Ig投与によるGVL効果への影響を検討するため、NOGマウスと同系マウス由来の肥満細胞腫瘍株P815及びB細胞リンパ腫株A20にルシフェラーゼ発現遺伝子を安定的に導入した細胞を慢性GVHDマウスに移入してGVL効果の評価を行う。[3] 引き続き、慢性GVHD患者の検体を用いてCD26やそのリガンドcav-1、及びIL-26の発現をフローサイトメトリーとELISAで解析する。さらに、慢性GVHDの治療や症状の経過との関連についても、臨床情報を分析して明らかにする。また、組織に浸潤したCD26Tリンパ球をl解析し、GVHDの障害臓器や部位、治療経過などによるCD26陽性リンパ球プロフィールの差異を分子細胞レベルで明らかにし、慢性GVHDの病因や新たな疾患活動性の臨床指標となるバイオマーカーを同定する
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
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