本研究課題で以下の実績をあげた。 1)重症薬疹における表皮細胞死のメカニズム解明:我々が同定したannexin A1/FPR1による細胞死の詳細なメカニズムを明らかにするためにFPR1刺激後のシグナル伝達経路の解明を行った。通常のnecroptosis経路であるRIP1/RIP3 complex形成に加えMLKLのリン酸化を確認した。これは通常のnecroptosis経路と同様であった。 2)Annexin A1/FPR1をターゲットにした細胞死阻害剤探索:上記の成果を発展させ、ネクロプトーシス阻害剤となるFPR1アンタゴニストを探索した。FPR1アンタゴニストはネクロプトーシスのシグナル因子の阻害剤に比し、疾患特異性があり、他のネクロプトーシス現象を抑制せず、副作用も少ないことが予想される。本研究は東京大学理学系研究科小澤岳昌教授と連携して行った。成果として、数個の候補物質の同定することができた。さらに既存の薬剤(drug repositioning)としても数種の候補薬を同定した。 3)重症薬疹における新たなバイオマーカー検索:重症薬疹におけるさらなるバイオマーカー検索のため、患者サンプルを用い質量分析およびRNA-seqによるタンパク、遺伝子発現を比較することで発症時のみならず、発症予測因子の探索も行った。本研究は医薬基盤研究所プロテオームリサーチセンターの朝長 毅センター長と連携して行った。通常薬疹と比べ、重症薬疹に特異的に上昇する候補マーカーを数種同定した。さらに症例での血清における濃度も測定し、早期診断マーカーになりうることを確認した。
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