研究実績の概要 |
CNV解析では、健常者129 (男児:64、女児:65)名、ASD患者67 (男児:43,女児:24)名を対象とした。被験者から末梢血を採取しゲノムDNAを抽出し、Affymetrix Genome-Wide human SNP6.0キットを用い、CNV解析を行った。Penn CNVによるコピー数異常の検出には、隠れマルコフモデルによりCopy Numberを推定し、CN =2以外をコピー数異常ゲノム領域とした。健常者と比較してASD患者群においてコピー数異常が見られたゲノム領域は、Chi-squared testにより算出し、P <0.05で有意差ありと見なした。 欧米人を対象とした先行研究では、健常者と比較してASD患者1人あたりのコピー数異常ゲノム領域の箇所が多いことが報告されていたが、我々の研究では、健常者37.8 (男児:38.2、女児:37.4)箇所、ASD患者 37.4 (男児:38.0,女児:36.8)箇所と有意差は認められなかった (Student’s t-test, P = 0.466)。また、12q21.31~21.33,4q13.2,8p23.1,18q12.3においてASD患者で有意にオッズ比が高いコピー数異常領域を検出した(Chi-squared test、それぞれP =0.013, 0.02, 0.03, 0.043)。欧米人を対象としたCNV解析では、本研究で明らかになったいずれの領域もコピー数異常があることが複数報告されており、日本人においても欧米人と共通のコピー数異常ゲノム領域が原因であることが明らかになった。しかしながら、先行研究の場合オッズ比が1.2~1.6と小さい一方で、日本人を対象とした本研究の結果ではオッズ比が2.0~3.5と比較的高い値を示したことから、日本人ASDの発症に関わる、より決定的なコピー数異常ゲノム領域であることが示唆された。
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