研究課題/領域番号 |
15H04890
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
福田 正人 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20221533)
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研究分担者 |
藤原 和之 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20735154)
服部 卓 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (30241897)
藤平 和吉 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70625582)
武井 雄一 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (30455985)
青山 義之 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60568351)
佐藤 大仁 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (40760004)
成田 秀幸 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (40516423)
高嶺 朋三 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (40756102)
小野 樹郎 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40721014)
菊地 千一郎 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (60323341)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 精神生理学 |
研究実績の概要 |
自我脳の機能について、臨床神経生理学的な指標を用いた検討を行った。 体性感覚における自我脳の機能については、脳磁図MEGを用いて電気刺激への体性感覚誘発磁場SEFに対して体性感覚注意条件・視覚注意条件・非注意条件という注意機能がおよぼす影響を健常者とうつ病患者で検討し、N20mとP60m成分の潜時と大きさに影響を及ぼすことがないことを明らかにした(Psychiatry Clin Neurosci 70:116-125, 2016)。 運動反応における自我脳の機能については、事象関連電位ERPを用いてGo/No-go課題におけるN2, P3成分を健常者と統合失調症患者検討し、No-go刺激に対するP3成分振幅が高機能統合失調症では減衰していないが、全般的機能レベルGAFと相関を示すことを明らかにした(Psychiatry Clin Neurosci 70: 278-285, 2016)。 脳における興奮抑制過程と自我脳の機能の関連については、脳磁図MEGで捉えた作業記憶課題における課題誘発性同期振動とmagnetic resonance spectroscopy (MRS)で捉えた脳内GABA濃度の関係を検討し、課題誘発同期振動がGABA系活性と関連することを明らかにした(NeuroImage 128:302-315, 2016)。 以上の結果をもとに、統合失調症において自我脳のリカバリーを図るうえで、個別化した価値について心理的な検討とならんで脳科学的な解明が重要であることをNatureグループの雑誌にまとめ(npj Schizophrenia 3:14, 2017)、また日本の医療においてそうした体制を確立するための道程の提案をLancetグループの雑誌に発表した(Lancet Psychiatry 4:268-270, 2017)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の神経科学における脳機能画像研究が、被検者が仰臥位で無動を保った状況で行われており、日常の生活場面とは異質な環境で行われてきている。これは、現実の実世界での脳機能をそのまま検討できる脳機能画像法が存在しなかったためである。第一年度は、自然な状態で脳機能が測定できる近赤外線スペクトロスコピィNIRSの利点を生かすことでその制約を乗り越え、実世界における自我機能を反映する脳機能を測定するうえでの方法論の基盤とすることに取り組んだ。 第二年度である本年度は、そうした取組みを発展させて、脳機能指標を磁気誘発磁場SEF・事象関連電位ERP・計測モダリティを脳磁図MEG・磁気共鳴スペクトロスコピィMRSへと拡大するとともに、測定条件を注意関連・運動反応・課題誘発同期振動へと広げて、自我脳の機能をより広い条件で検討できる具体例を実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
第一年度と第二年度は、自我脳という学問分野を開拓していくうえで必要となるNIRSやMEGの検査法について、その方法論的な基礎を確立した。統合失調症の自我障害やうつ病の精神運動制止などいずれの精神疾患の病態生理においても、内発的に行動を起こす主体としての「自我」の機能とそのメタ認知である「自己」の機能は重要である。 自己の脳機能についての解明の進歩に比べて、「自我」の脳機能の解明は立ち遅れている。それは、脳機能画像検査法の制約から「与えられた課題を受動的に処理する」という検査状況に限定されて、自ら目標を設定し内発的に行動を起こす際の脳機能画像検査が困難なためである。Nature誌は2017年1月からNature Human Behaviorを刊行開始したことは、そうした問題意識が学問における先端の課題となってきていることを示していると考えられる。 第三年度と第四年度においては、自我機能と自己機能について、行動についてのmotor self、感覚についてのsensory-affective self、身体についてのbodily selfなどのように、より弁別的に検討していくとともに、統合失調症やうつ病などの精神疾患におけるそれらの機能障害を明らかにし、その支援方法の開発へと結びつけていくことを予定している。
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