研究課題
昨年度確立した、レトロトランスポゾンLINE-1の胎仔脳でのコピー数増大が安定して生じる妊娠マウスへのpoly(I:C)化合物投与条件下(e12.5から5日間の低容量のpoly(I:C)連続投与)において、最終投与を行ったe16.5から1日後のe17.5ステージの胎仔から前脳領域を採取し、神経前駆細胞をProminin-1をマーカーとした磁気ビーズ法により単離を行った。単離したProminin-1陽性神経前駆細胞からtotal RNAを抽出し、RNA-Seq解析を行った。解析はpoly(I:C)投与群(N=5)と対照群(N=5)の比較解析で行った。またタンパク質を抽出し、iTRAQ法によるタンパク質発現解析を行った。その結果、RNA-seq解析からは、免疫応答関連遺伝子群や炎症関連遺伝子群、host defense関連遺伝子群などにおいて有意な発現上昇を認めた。一方で、神経発達関連遺伝子群や神経機能に関連する遺伝子群では有意な発現低下を認めた。また、poly(I:C)投与によりスプライシングパターンが変動する神経伝達物質受容体遺伝子を見出した。iTRAQ法によるタンパク質発現解析からはレトロトランスポジションやウイルス活動に対し抑制的に働くエピジェネティック制御に関わる因子の発現上昇と、神経発達に関連する蛋白質の発現減少を認めた。合わせてPoly(I:C)投与により胎仔脳で上昇したレトロトランスポジション活性を抑制する分子機構が働いていると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
神経前駆細胞の単離とオミックス解析が順調に進展している。
最終年度は、神経前駆細胞のLINE-1のエピジェネティックな修飾状態に焦点をあてた解析を行っていく方針である。
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Psychiatry and Clinical Neurosciences
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