研究課題
生後0~1日のラット皮質からアストロサイトを分離・精製培養(2週間)し、純度95%以上の培養アストロサイトを精製した。精製された培養アストロサイトを人工脳脊髄液に移し、人工脳脊髄液内に遊離された伝達物質を、超高速液体クロマトグラフ(蛍光検出器あるいは質量分析装置)を用いて定量した。遊離された化学物質の多くは、電位依存性ナトリウムチャネル非感受性であった。しかし、一部の物質は、SNAREタンパク質感受性であった。ナトリウムチャネル非感受性+ SNAREタンパク質感受性の物質の中で、アストロサイトのアコニターゼ阻害薬であるフルオロクエン酸によって遊離が減少した物質としては、1)ヌクレオチド誘導体:ATP・ADP・AMP・アデノシン2)トリプトファン誘導体:キヌレン酸・キサンツレン酸・シンナバリン酸3)アミノ酸:L-グルタミン酸・D-セリン以上、9種の化学伝達物質が、グリア伝達物質として確定された。サイトカインの上記グリア伝達物質遊離に対する効果を検討したが、グリア伝達物質遊離が増加しており、少なくともAMPA型グルタミン酸受容体が関与する可能性が指摘可能であった。また、このサイトカインによるグリア伝達物質遊離増加は、急性投与と慢性投与で特徴が異なることから、多様なサイトカインの作用機序を示唆する物であった。抗精神病薬・抗うつ薬・抗てんかん薬・認知症治療薬のグリア伝達に対する効果を検討したが、病態と病態生理で予想外の結果が得られ、この想定外の結果が、単なる結果か此れまでの知見を修正する必要性を示唆する結果か、詳細な検証の必要性に迫られている。
3: やや遅れている
グリア伝達物質の探索と、グリア細胞の開口分泌機構解析は当初の計画以上に進展している。しかし、抗精神病薬・抗うつ薬・抗てんかん薬・認知症治療薬のグリア伝達物質遊離に対する効果の検討が当初の予想とは異なる結果が明らかとなり、スクリーニンのが完了に時間を要している。各種薬剤のグリア伝達物質遊離に対する効果の詳細は検討は可能である。
培養グリア細胞を用いたグリア伝達解析から、in vivoによる三者間伝達へ、解析対象を変更する予定である。
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