研究課題
1.統合失調症死後脳の病歴調査及びデータベース作成。対象:島根大学精神医学講座及び解剖学講座保存管理されている統合失調症死後脳(15例)及び性差及び年齢が一致した健常人死後脳(15例)を選定した。検討事項:統合失調症死後脳に関する一般情報として、性別、生活歴(アルコール、喫煙、依存症薬物摂取歴等)死亡時の年齢、死因、死亡時の状況、死亡後脳組織固定及び凍結までの時間、解析に用いられるまでの組織固定及び凍結されていた期間を調査する。臨床情報として生前の病状の経過、死亡時の精神状態、治療歴、合併症の影響、薬物治療反応性について診療録をもとに調査した。健常人死亡脳についても同様に一般情報を調査した。2.統合失調症死後脳の海馬領域の活性化ミクログリア等の分布状況の解析(光学顕微鏡)対象:島根大学精神医学講座及び解剖学講座にて保存管理されている統合失調症死後脳(5例)及び性差及び年齢が一致した健常人死後脳(5例)を対象とした。検討事項:海馬領域を含む凍結切片を作成し、抗Ibal抗体、抗CD11b抗体、抗GFAP、抗MBP抗体、抗NewN抗体等を用い、活性化ミクログリア細胞、アストログリア細胞、オリゴデンドロ細胞の分布状況について光学顕微鏡下で詳細な検討を行った。3.結果上記手法が可能であることが明確となったので、島根大学医学部において医の倫理委員会へ申請及び承認を得た。現在観察検体の集積を継続している。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、統合失調症という未だ病因不明の精神疾患の病態解明へつなげ、新規治療薬の開発および治療戦略を確立することができ、難治性統合失調症患者の治療や根治に貢献できる可能性のある社会的に重要性が高い研究である。研究手法が確立したことが確認できたので、島根大学医学部において、医の倫理委員会へ申請、承認後観察検体を集積する。具体的には研究分担者である県立広島大学津森教授が定期的に来学し、研究期間である島根大学医学部精神医学講座において、標本作成及び組織染色指導を担当し、電気顕微鏡による標本作成及び解析も同様に行い、統計解析を進行している。
統合失調症死後脳における海馬歯状回のグリア細胞の形態学特徴評価のためのPilotstudyから得られた結果をもとに、引き続き、統合失調症死後脳と健常者死後脳を用いて、海馬歯状回の成熟・未成熟ニューロンそれぞれの分子マーカーを用いて免疫染色を行う。そして共焦点レーザー顕微鏡及び光学顕微鏡で比較解析を行い、それらの分布様態や数的差異を比較解析する。また、同様に治療抵抗性統合失調症モデルラット(Gunnラット)及び覚醒剤投与ラットの脳組織学研究を行い、それらのグリア細胞の形態学的特徴を発展的に解析及びニューロンの成熟度についても解析を行った。その結果については論文投稿準備中である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Frontiers in Psychiatry
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doi: 10.3389/fpsyt.2017.00174.
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