• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実績報告書

アミロイド関連うつ病の分子イメージング

研究課題

研究課題/領域番号 15H04896
研究機関日本医科大学

研究代表者

大久保 善朗  日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (20213663)

研究分担者 鈴木 秀典  日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (30221328)
舘野 周  日本医科大学, 医学部, 准教授 (50297917)
肥田 道彦  日本医科大学, 医学部, 講師 (60434130)
上田 諭  日本医科大学, 医学部, 講師 (80465294)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード高齢者 / うつ病 / 認知症 / 軽度認知障害 / アルツハイマー病 / PET / アミロイド / タウ
研究実績の概要

[18F] florbetapirは従来のアミロイド用PETリガンドと比べて敏感度、特異度共に優れており、今後、アミロイドイメージングの中心技術となると期待されている。本研究ではうつ病エピソードを既往に持つ軽度認知障害群を対象に、[18F] florbetapirを用いたアミロイドイメージングを行い、軽度認知症患者アミロイド陽性群は陰性群に比べて、うつ病の発症年齢が有意に高齢であることを明らかにした。この結果は、若年または成人発症のうつ病より、晩発性うつ病がアミロイド病変と関連すること、アルツハイマー病の前駆症状としてのうつ病の存在を示唆していると考えた。アミロイドイメージングを行った被験者については可能な限り追跡調査を行った。その結果、アミロイド蛋白が有意に高く集積している群では、集積が低い群と比較して認知機能が有意に低下することを確認した。さらに、新規リガンド[11C]PBB3によるタウイメージングを導入した。アルツハイマー病患者におけるタウイメージングでは、アミロイドが大脳新皮質や後部帯状回への集積が強く、側頭葉内側への集積が弱いのと対照的に、タウが海馬を含む側頭葉内側部に強い集積が認められること、またその集積が症状の重症化に伴い、大脳辺縁系、さらには大脳新皮質の広範な領域へ拡大を示し、剖検脳の神経病理解析に基づくBraakのタウ病期の進行とよく一致していることが確かめた。以上から、[11C]PBB3で画像化されるタウ蓄積部位の広がりを指標として、アルツハイマー病の認知症発症に前駆するうつ病の病態評価に応用する準備が整った。この他、高齢者のうつ病の病態に関連すると思われるドパミントランスポーターおよびセロトニン1B受容体イメージングを用いた検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

[18F] florbetapirを用いたアミロイドイメージングを用いた研究では、軽度認知症患者でアミロイド陽性群は陰性群に比べて、うつ病の発症年齢が有意に高齢であることを明らかにした。この結果は、若年または成人発症のうつ病より、晩発性うつ病がアミロイド病変と関連すること、アルツハイマー病の前駆症状としてのうつ病の存在を示す結果としての意義があると考えた。また、追跡調査の結果、アミロイド蛋白が有意に高く集積している群では、集積が低い群と比較して認知機能が有意に低下することを確認した。 [11C]PBB3によるタウイメージングを用いた研究では、アルツハイマー病患者におけるタウイメージングの集積がBraakのタウ病期の進行とよく一致していることが確かめ、[11C]PBB3によるタウイメージングを、アルツハイマー病の認知症発症に前駆するうつ病の病態評価に応用する準備を整えた。

今後の研究の推進方策

高齢者のうつ病患者を対象に、アミロイド、タウイメージングを行うことによって、これまでは病理所見でしか捉えられなかった老人斑、神経原線維変化といった認知症の中核的な分子病理の詳細な評価を行っていく。さらに、ドパミントランスポーター、セロトニン1B受容体イメージングも併用することによって、高齢者のうつ病の病態を反映する脳機能の早期の変化を明らかにしていく。わが国では高齢化社会を迎えて、抑うつ、幻覚妄想、性格行動変化などの精神症状を主訴に受診する高齢者が増えている。通常検査で異常を認めない場合、うつ病や妄想性障害などの機能性精神疾患と診断し治療するが、症例により治療効果や副作用の出現が異なり、経過を追うとアルツハイマー病、前頭側頭型変性症、レビー小体病など変性性認知症に発展する場合がある。認知症の前駆症状としての精神症状を主訴に精神科を受診した際、これまでは経過を追うしか方法がなかったが、本研究で用いる分子イメージング技術を駆使することによって、高齢者の精神症状の基盤にある病態の評価さらには、病態を考慮した個別的な治療戦略の提案に結びつける。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] Indications of success: Strategies for utilizing neuroimaging biomarkers in CNS drug discovery and development: CINP/JSNP working group report.2017

    • 著者名/発表者名
      Suhara T, Chaki S, Kimura H, Furusawa M, Matsumoto M, Ogura H, Negishi T, Saijo T, Higuchi M, Omura T, Watanabe R, Miyoshi S, Nakatani N, Yamamoto N, Liou SY, Takado Y, Maeda J, Okamoto Y, Okubo Y, Yamada M, Ito H, Walton NM, et al.
    • 雑誌名

      Int J Neuropsychopharmacol.

      巻: 20(4) ページ: 285-294

    • DOI

      10.1093/ijnp/pyw111.

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Yokukansan improves behavioral and psychological symptoms of dementia by suppressing dopaminergic function.2016

    • 著者名/発表者名
      Takeyoshi K, Kurita M, Nishino S, Teranishi M, Numata Y, Sato T, Okubo Y.
    • 雑誌名

      Neuropsychiatr Dis Treat.

      巻: 12 ページ: 641-9

    • DOI

      10.2147/NDT.S99032.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Time-course of serotonin transporter occupancy by single dose of three SSRIs in human brain: A positron emission tomography study with [(11)C]DASB.2016

    • 著者名/発表者名
      Arakawa R, Tateno A, Kim W, Sakayori T, Ogawa K, Okubo Y.
    • 雑誌名

      Psychiatry Res.

      巻: 251 ページ: 1-6

    • DOI

      10.1016/j.pscychresns.2016.03.006.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Neuroleptic-induced deficit syndrome in bipolar disorder with psychosis.2016

    • 著者名/発表者名
      Ueda S, Sakayori T, Omori A, Fukuta H, Kobayashi T, Ishizaka K, Saijo T, Okubo Y.
    • 雑誌名

      Neuropsychiatr Dis Treat.

      巻: 12 ページ: 265-8

    • DOI

      10.2147/NDT.S99577.

  • [雑誌論文] アミロイドイメージングによる認知症の診断2016

    • 著者名/発表者名
      舘野周、大久保善朗
    • 雑誌名

      臨床精神医学

      巻: 45 ページ: 433-439

  • [雑誌論文] 高齢者における幻覚妄想症状とドパミントランスポーターイメージング2016

    • 著者名/発表者名
      大久保善朗
    • 雑誌名

      分子精神医学

      巻: 16 ページ: 88-91

  • [学会発表] 軽度認知機能障害患者の顔認知時の脳機能に関する予備的検討 機能的MRI研究(2016

    • 著者名/発表者名
      肥田 道彦、 舘野 周, 大久保 善朗
    • 学会等名
      第31回日本老年精神医学会
    • 発表場所
      金沢歌劇座
    • 年月日
      2016-06-23 – 2016-06-24
  • [学会発表] 難治性うつ状態に電気けいれん療法が有効であったアミロイド関連うつ病の一例 3年の長期入院からの回復2016

    • 著者名/発表者名
      小林 まどか, 明野 薫, 肥田 道彦, 上田 諭, 舘野 周, 大久保 善朗
    • 学会等名
      第31回日本老年精神医学会
    • 発表場所
      金沢歌劇座
    • 年月日
      2016-06-23 – 2016-06-24
  • [学会発表] 老年期うつ病と認知症の関連 うつ病と認知症の関連 神経画像所見から2016

    • 著者名/発表者名
      舘野 周, 大久保 善朗
    • 学会等名
      第31回日本老年精神医学会
    • 発表場所
      金沢歌劇座
    • 年月日
      2016-06-23 – 2016-06-24
  • [学会発表] アミロイドPETイメージングを用いた高齢者の精神疾患の評価2016

    • 著者名/発表者名
      舘野周
    • 学会等名
      第112回日本精神神経学会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      2016-06-02 – 2016-06-04
  • [学会発表] 老年期の重症うつ病の回復過程にみられた妄想の階層性 電気けいれん療法による治療経過に基づく考察2016

    • 著者名/発表者名
      平澤 俊之, 内山 翔太郎, 坂寄 健, 金 禹さん, 上田 諭, 大久保 善朗
    • 学会等名
      第112回日本精神神経学会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      2016-06-02 – 2016-06-04
  • [学会発表] アミロイドβ集積の経時変化 [18F]florbetapirを用いたPET研究2016

    • 著者名/発表者名
      山本 憲 坂寄 健, 舘野 周, 大久保 善朗
    • 学会等名
      第112回日本精神神経学会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      2016-06-02 – 2016-06-04
  • [学会発表] 血管性うつ病の経過に伴う脳形態学的変化 非血管性うつ病と比較検討した予備的研究2016

    • 著者名/発表者名
      下田 健吾, 木村 真人, 大久保 善朗
    • 学会等名
      第112回日本精神神経学会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      2016-06-02 – 2016-06-04
  • [学会発表] 老年期うつ病のドーパミントランスポーターイメージング2016

    • 著者名/発表者名
      守屋 洋紀, 坂寄 健, 金 禹瑣, 増岡 孝浩, 新貝 慈利, 舘野 周, 大久保 善朗
    • 学会等名
      第112回日本精神神経学会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      2016-06-02 – 2016-06-04
  • [学会発表] 電気けいれん療法がドーパミントランスポーターに及ぼす影響2016

    • 著者名/発表者名
      増岡 孝浩, 坂寄 健, 舘野 周, 大久保 善朗
    • 学会等名
      第112回日本精神神経学会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      2016-06-02 – 2016-06-04
  • [学会発表] PHQ-9によるうつ病評価とNIRSによる前頭側頭機能評価の関連2016

    • 著者名/発表者名
      肥田 道彦, 秋山 友美, 永田 恵理香, 太田 杏奈, 池森 紀夫, 下田 健吾, 木村 真人, 大久保 善朗
    • 学会等名
      第112回日本精神神経学会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      2016-06-02 – 2016-06-04

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi