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2016 年度 実績報告書

PETによる心血管疾患の活動性の映像化と治療戦略への応用

研究課題

研究課題/領域番号 15H04898
研究機関北海道大学

研究代表者

玉木 長良  北海道大学, 医学研究科, 特任教授 (30171888)

研究分担者 小川 美香子  北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20344351)
納谷 昌直  北海道大学, 大学病院, 講師 (20455637)
吉永 恵一郎  北海道大学, 医学研究科, 客員研究員 (30435961)
中山 若樹  北海道大学, 医学研究科, 講師 (40421961)
西嶋 剣一  北海道大学, 大学病院, 薬剤師 (60364254)
久下 裕司  北海道大学, アイソトープ総合センター, 教授 (70321958)
真鍋 徳子  北海道大学, 大学病院, 講師 (70463742)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード心血管疾患 / PET
研究実績の概要

動脈硬化不安定プラークは、マクロファージが浸潤することを特徴とする。これまでに、[18F]FDGはプラークを不安定化させるM1マクロファージを捉えることを見出した。これに対し平成27年度には、低酸素PETイメージング剤である[18F]FMISOがプラーク安定化に関わるM2マクロファージに取り込まれることを見出した。そこで本年度、PET画像を用いインビボで検証した結果、若齢の動脈硬化モデルウサギでは[18F]FDGと比較し[18F]FMISOでは取り込みが低く炎症が進展している病変ではM2マクロファージが少ない可能性が見出された。さらに、動脈硬化の初期石灰化病変を捉えると期待される[18F]NaFについて検討したところ、骨芽細胞に分化するにつれ多く取り込まれることを見出した。
我々は心臓サルコイドーシスにおけるFDG-PETの有効性を先駆的に報告してきた。この検査では心筋への生理的集積を抑制する必要がある。そのための種々の前処理の条件を検討し、報告してきた。他方心筋への生理的集積のないPET用薬剤として低酸素マーカーで用いるFMISOを用いた検討を行い、FMISO-PETが心臓サルコイドーシスの診断に有効であることを世界ではじめて英語論文報告した。(J Nucl Cardiol. 2017 Feb;24(1):329-331. doi: 10.1007/s12350-016-0495-2. Epub 2016 Apr 12.)
FDGとFMISOでは集積度も、周囲の生理的集積も大きく異なっており、両者の相違点と不安定プラークを含む活動性病変の病態評価についての役割について詳細な検討を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度までに、低酸素PETイメージング剤である[18F]FMISOは、動脈硬化プラークを不安定化させる活性化マクロファージ(M1マクロファージ)より安定化に関わるマクロファージ(M2マクロファージ)へ取り込まれやすいことを見出した。そこで、平成28年度は動脈硬化モデル動物であるWHHLウサギを用いPETにて検討したところ、プラークへの取り込みは[18F]FDGより劣るが(FDG: 18 % dose/g, FMISO: 5% dose/g) 、心臓プラーク比は[18F]FDGより高いことが判った。今回検討した16か月齢のウサギではM2マクロファージがあまり認められなかったことが、取り込みが低い原因と考えられる。
さらに、動脈硬化の初期病変を捉えると期待される[18F]NaFについて検討した。[18F]NaFは正常組織への取り込みがほとんどなく、バックグラウンド比の高い画像を得ることができる。動脈硬化病変には骨芽細胞および破骨細胞が存在し、石灰化に関わっていることが知られている。そこでまず骨芽細胞・破骨細胞の初代培養系を確立した。次に骨芽細胞について[18F]NaFの取り込みを検討したところ、培養日数が増え石灰化が進むにつれて取り込みが上昇した (1.2 to 38 % dose/ mg protein)。一方、破骨細胞への取り込みは培養日数に関わらず低かった( 0.15% dose/ mg protein)。さらに、破骨細胞はマクロファージから分化した細胞であることが知られている。よって、これまでにマクロファージへの取り込みを報告している[18F]FDGについても検討した。この結果、骨芽細胞に比較し破骨細胞のほうが高い取り込みがあることが判った。
心臓サルコイドーシスの診断に用いられる[18F]FDGは、長時間の絶食と低炭水化物の食事が望ましいことを報告した。

今後の研究の推進方策

平成27年度に繁殖を開始した動脈硬化モデル動物であるapoE KOマウスが順調に増殖し始めたため、平成29年度はapoE KOマウスを用いてインビボにて[18F]FMISOおよび[18F]NaFに関する詳細な検討を進め、それぞれプラーク進展のどの段階を捉える可能性があるのか明らかにする。また、[18F]NaF に関してはCa沈着量との関係を定量化するとともに、WHHLウサギを用いてインビボにて[18F]NaFの集積している部位にどのような細胞が存在しているか病理との関係を明確にする。
他方、臨床例では心臓サルコイドーシスを中心に検討を進めてきたが、最終年度にはこの疾患での上記の3つのPET薬剤のそれぞれの役割を明確化すると共に、頸動脈や大動脈のプラーク、さらには心筋等にも応用して、病巣の活動性をとらえると共に、治療前後での変化を捉えて、治療効果判定にどの程度役立つか、についても検討を加える。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 18F-fluoromisonidazole (FMISO) PET may have the potential to detect cardiac sarcoidosis.2017

    • 著者名/発表者名
      Manabe O, Hirata K, Shozo O, Shiga T, Uchiyama Y, Kobayashi K, Watanabe S, Toyonaga T, Kikuchi H, Oyama-Manabe N, Tamaki N.
    • 雑誌名

      J Nucl Cardiol

      巻: 24 ページ: 329-331

    • DOI

      10.1007/s12350-016-0495-2. Epub 2016 Apr 12.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The effects of 18-h fasting with low-carbohydrate diet preparation on suppressed physiological myocardial 18F-fluorodeoxyglucose (FDG) uptake and possible minimal effects of unfractionated heparin use in patients with suspected cardiac involvement sarcoidosis.2016

    • 著者名/発表者名
      Manabe O, Yoshinaga K, Ohira H, Masuda A, Sato T, Tsujino I, Yamada A, Oyama-Manabe N, Hirata K, Nishimura M, Tamaki N.
    • 雑誌名

      J Nucl Cardiol

      巻: 23 ページ: 244-252

    • DOI

      10.1007/s12350-015-0226-0. Epub 2015 Aug 5.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparison of (18)F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography (FDG PET) and cardiac magnetic resonance (CMR) in corticosteroid-naive patients with conduction system disease due to cardiac sarcoidosis.2016

    • 著者名/発表者名
      Ohira H, Birnie DH, Pena E, Bernick J, Mc Ardle B, Leung E, Wells GA, Yoshinaga K, Tsujino I, Sato T, Manabe O, Oyama-Manabe N, Nishimura M, Tamaki N, Dick A, Dennie C, Klein R, Renaud J, deKemp RA, Ruddy TD, Chow BJ, Davies R, Hessian R, Liu P, Beanlands RS, Nery PB.
    • 雑誌名

      Eur J Nucl Med Mol Imaging.

      巻: 43 ページ: 259-269

    • DOI

      10.1007/s00259-015-3181-8. Epub 2015 Sep 11.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 症例から学ぶ心サルコイドーシスのMRI所見2016

    • 著者名/発表者名
      真鍋徳子
    • 学会等名
      AIMS cardiac imaging
    • 発表場所
      イイノホールカンファレンスセンター(東京都千代田区)
    • 年月日
      2016-05-21 – 2016-05-21
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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