研究課題
申請者らが独自に開発した高感度タウPETプローブの有用性を確認する目的で、計41名の被検者で[18F]THK-5351および[11C]PiB PET検査を実施した。[18F]THK-5351投与後90分間のダイナミック撮像を実施した結果、投与40分後以降でSUV対小脳比(SUVR)が一定値となったことから、本プローブの最適な撮像時間帯は投与40分以降と判断された。同一被検者で[18F]THK-5351、[18F]THK-5117を投与して得られたPET画像を比較したところ、[18F]THK-5351の方がシグナル対ノイズ比の高い画像が得られ、皮質下白質や脳幹部からのクリアランスも良好であった。PMODソフトウェアを用いた自動関心領域設定によって、脳各領域における[18F]THK-5351 SUVR値を健常高齢者、軽度認知障害、アルツハイマー病患者の三群間で比較した結果、中下側頭回におけるSUVR値によってアルツハイマー病群と健常高齢者の二群を感度・特異度90%以上で鑑別可能であった。軽度認知障害群のSUVR値は健常高齢者とアルツハイマー病患者の中間的な値を示し、タウ病理像の形成が過渡期にあると考えられた。PiB-PETで高集積所見を示した健常高齢者(Preclinical AD)においても大脳皮質におけるSUVR値上昇を認めたことから、アミロイドβ病理像がタウ蛋白病変の大脳皮質への進展を加速させている可能性が示唆された。当初の予想通り、下部側頭葉における[18F]THK-5351集積量は認知症重症度の指標となるADAS-cogスコアと有意な正の相関を示した。上記臨床研究と並行して、ヒト病理脳標本を用いてオートラジオグラフィーや結合アッセイ試験を実施した結果、[18F]THK-5351がタウ病変に高い親和性および選択性を有することが確認された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は計41名の被検者で[18F]THK-5351を用いたPET検査を実施した。臨床研究における症例数の蓄積は順調に進んでおり、アルツハイマー病診断における臨床的有用性とタウ蛋白病理像への選択性を確認することができた。また暫定的な解析ながらもアミロイドβとタウの相互作用を示唆するデータも得られている。
引き続きPET撮像を実施して、健常高齢者、軽度認知障害の症例数を増やすほか、既に検査を実施済の被検者で一年後の追跡撮像を実施する計画である。In vitroでの評価では、アルツハイマー病以外の神経疾患の脳切片も使用して、結合選択性をより詳細に評価する予定である。さらにタウ蛋白が自然蓄積するタウトランスジェニックマウスを用いて、[18F]THK-5351のin vivoでの細胞内タウ病変への結合能力も検証したいと考えている。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 8件、 招待講演 5件)
Ageing Res Rev.
巻: 30 ページ: 107-113
10.1016/j.arr.2015.12.010.
巻: 30 ページ: 1-3
10.1016/j.arr.2016.02.005.
J Nucl Med
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.2967/jnumed.115.163493
Biomolecules.
巻: 6 ページ: 1-15
10.3390/biom6010007
巻: 57 ページ: 208-214
10.2967/jnumed.115.164848
Curr Opin Neurobiol
巻: 36 ページ: 43-51
10.1016/j.conb.2015.09.002.
PLoS One
巻: 10 ページ: e0140311
10.1371/journal.pone.0140311
Acta Neuropathol Commun.
巻: 3 ページ: 40
10.1186/s40478-015-0220-4.
Eur J Nucl Med Mol Imaging.
巻: 42 ページ: 1052-1061
10.1007/s00259-015-3035-4.