研究課題
27年度実績として,次世代型粒子線治療のための基盤研究として,以下の4つのテーマを実行し,基礎と臨床をつなぐトランスレーショナルリサーチを行った.現在,難治癌については集学的治療のなかで化学療法と放射線治療が行われているが,強力な薬剤と広い範囲の放射線による合併症が問題となっている.「粒子線による高次の抗腫瘍効果発現メカニズムの解明」では,化学療法と陽子線治療の併用について検討した.3種類のヒトがん細胞株を用いてX線と陽子線の化学療法併用による効果の違いについて検討している.「粒子線による正常組織障害発現メカニズムの解明」においては,中性子捕捉療法での正常組織への影響の検討のため,チャイニーズハムスター由来細胞(SCCVII、V79)および悪性黒色細胞に対して、フリービーム照射条件で中性子線を照射し,生存率曲線から各スペクトルを有する中性子線のRBEを算出する予定であるが,今年度はコントロールとなるX線でのデータ取得をほぼ終了した.「BNCTの細胞死予測とサバイバルマッピングによる治癒率予測プログラム作成」では,治療計画装置をほぼ完成し,データ入力準備が可能となった.今後は,生物データを具体的に取得する段階に入ってゆく.「基盤研究シーズから出てくる新しい臨床試験の立案」において,陽子線治療については,脳動静脈奇形に対する臨床試験の継続,新たに保険適応となった小児腫瘍に対する全国的なレジストリの検討を行った.肝癌,および肝内胆管癌に対する臨床試験については臨床研究計画書を完成させた.中性子捕捉療法においては,皮膚悪性腫瘍を対象として,医師主導治験を行うための臨床研究計画書がほぼ完成している.
2: おおむね順調に進展している
3年間の基盤研究であるが,初年度はおおむね順調に計画を遂行した.「粒子線による高次の抗腫瘍効果発現メカニズムの解明」では,化学療法と併用した陽子線治療の効果を検証した.3種類のヒトがん細胞株を用いてX線と陽子線の化学療法併用による効果の違いについて検討した.現在は細胞死の形態ついて検討を加えている.また,子宮頸癌の組織をもちいて,既知の放射線感受性因子,特に転移浸潤に関する因子をタンパクレベルで解析を行った.「粒子線による正常組織障害発現メカニズムの解明」においては,中性子捕捉療法での正常組織への影響の検討に関わる,コントロールとなるX線でのデータ取得をほぼ終了した.X線と陽子線治療の比較検討では,臨床的に陽子線治療患者の治療経過の詳細を調査し,DVH解析,背景因子解析により有害事象発生の臨床的要因を探った.この結果,食道癌,肺癌においては陽子線治療において正常組織線量が少なく,有害事象も少ないことが明らかになった.「BNCTの細胞死予測とサバイバルマッピングによる治癒率予測プログラム作成」では,治療計画装置はほぼ完成しており,画像内に予測される細胞死の確率をインプットする準備が可能となった.「基盤研究シーズから出てくる新しい臨床試験の立案」において,陽子線治療については,脳動静脈奇形に対する臨床試験の継続,新たに保険適応となった小児腫瘍に対する全国的なレジストリの検討を行った.肝癌,および肝内胆管癌に対する臨床試験については臨床研究計画書を完成させた.中性子捕捉療法においては,皮膚悪性腫瘍を対象として,医師主導治験を行うための臨床研究計画書がほぼ完成している.
「粒子線による高次の抗腫瘍効果発現メカニズムの解明」では,化学療法と併用した陽子線治療における細胞死の形態ついて検討を加えるとともに,これまでのX線,陽子線治療の患者腫瘍検体をもちいて,既知の放射線感受性因子をタンパクレベルで解析を行う.子宮頸癌,食道癌を主たる疾患とし,放射線感受性に関与する分子について解析を行うとともに臨床での治療効果との相関を検討する.「粒子線による正常組織障害発現メカニズムの解明」においては,中性子捕捉療法での正常組織への影響の検討のため,チャイニーズハムスター由来細胞(SCCVII、V79)および悪性黒色細胞に対して、フリービーム照射条件で中性子線を照射し,生存率曲線から各スペクトルを有する中性子線のRBEを算出する予定である.「BNCTの細胞死予測とサバイバルマッピングによる治癒率予測プログラム作成」では,生物学的データの取得が課題となるため,まずホウ素化合物(BPA)に対する生物効果(CBE)の評価を行うこととした.今後の装置の開発状況に応じて,がん細胞と正常細胞におけるCBEの算出(細胞),抗腫瘍効果におけるRBE及びCBEの算出(マウス),正常組織障害におけるRBE及びCBEの算出(マウス),を検討して行く.「基盤研究シーズから出てくる新しい臨床試験の立案」において,陽子線治療についての臨床研究を先進医療Bとして推進するとともに,中性子捕捉療法においては,皮膚悪性腫瘍を対象とした医師主導治験を行うための多施設協議に入る予定である.
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すべて 雑誌論文 (18件) (うち査読あり 18件、 オープンアクセス 18件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (3件)
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