研究課題
本研究は、転移性脳腫瘍の放射線治療を個別最適化する方法を開発することを目的として行った。その中で、まず予後が12か月以上あると想定される患者群においては、定位放射線照射に全脳照射を併用することで、脳腫瘍再発率が大幅に低下し、その結果として両治療を併用した群で生命予後が有意に上昇することを明らかにした(JAMA Oncol 2015)。一方で、通常線量を用いた全脳照射(30Gy/10分割)を用いた場合、特に長期生存者で問題となる認知機能の低下は看過できない問題である。そこで、腫瘍制御を犠牲にせず、認知機能低下のリスクが低い照射法を開発できないかという視点で研究を進めた。まず「脳への放射線治療の照射パラメータの違いが認知機能に及ぼす影響に関する研究」を行い、全脳照射の総線量と1回線量を減らすことで認知機能低下のリスクを低減できる可能性があることを明らかにした。次に認知機能検査の適切な解析方法に関する研究を進め、臨床的に意義のある変化を反映するカットオフ値は最低でも「≧1.5SD」に設定する必要があることを明らかにした。これらの研究と並行し、「腫瘍制御を損なうことなく認知機能を温存することを目的とした定位照射併用時の全脳照射線量最適化に関する研究」(日本放射線腫瘍学研究機構多施設共同第二相臨床試験13-1)を主任研究者として推進した。その結果、全脳照射線量を25 Gy/10分割に低減しても従来法(30 Gy/10分割)と比較して、腫瘍制御率を犠牲にすることなく、認知機能低下のリスクを低減できる可能性があることなど明らかにした(ASTRO 2020他)。これら研究成果をもとに、次期の研究ではこれらの成果を生かし、第三相臨床試験を推進し、腫瘍制御と認知機能温存を良質した、個々の患者に最適な、新たな世界標準治療法の確立に向けて研究を進める予定である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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