研究課題/領域番号 |
15H04905
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
富樫 かおり 京都大学, 医学研究科, 教授 (90135484)
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研究分担者 |
木戸 晶 京都大学, 医学研究科, 助教 (80595710)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 子宮機能 / 妊孕能 |
研究実績の概要 |
本研究では、多様な撮像方法を用いて、子宮の形態とともに、機能の解析を推進し、また疾患への応用を模索していくことを目的としている。これに対し、下記のような業績が得られた。 子宮機能解析のうち、子宮蠕動に関して正常の分娩、出産後の蠕動及び、正常子宮のMRI像の変化の検討を行った。妊娠から分娩後にかけて母体に顕著なホルモン変化が生じ、更に出産後は授乳によっても内分泌環境の変化が生じる。蠕動は授乳群で有意に抑制されており、妊娠のコントロールに対する関与が示唆された。また形態的にも授乳期には子宮自体が小さく、閉経後に類似した像を呈している点についても、授乳中の子宮は妊孕能を抑制した状態にあることが明らかにされた。 また、子宮の機能と形態の相関の検討として、Junctional Zoneの厚さ・明瞭度と蠕動の関係について検討を行った。結果、形態・機能ともに閉経前後での有意な変化は認められたが、その相関性については明らかではなかった。 前年度の報告に一部示したように、子宮頸癌について通常推奨されているb値(1000s/mm2)では子宮頚管も高信号を呈し、腫瘍進展範囲の正確な評価が困難となる問題点があったためcomputed DWIの手法を用いて最適b値の検討を行った。結果、腫瘍の明瞭性、全体の画質の観点から、b=1300,1600s/mm2が、子宮頸癌の画像評価に最適と考えられた。 また、臨床症例についての検討では、2014年のWHO分類改訂において新たに作られた漿粘液境界悪性腫瘍(Seromucinous borderline tumor)の画像所見について内膜症性嚢胞発生の悪性腫瘍との鑑別を主眼に定性・定量的に比較検討を行い、特徴的所見を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目としては、概ね予定通り順調に成果を上げている。 子宮蠕動について、また蠕動と形態について、新たな知見を得、次へのステップとなるデータとなった。腫瘍についての予後予測は、子宮体癌については結果をまとめる段階にきており、また下記に記す通り、新たに頸癌の研究も計画している。その他の腫瘍についても、現在計画中、検討中の研究があり、次年度では結果をまとめていくことが可能となる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの結果のうち、内膜症性嚢胞と関連する腫瘍について、これまで今年度を含め、他にも当グループから複数の報告を行ってきた。次年度は、それを更に進め、当院ならではの多くの症例から、子宮内膜症から発生する卵巣癌について、実症例を検討することにより、早期に、もしくは明らかな充実悪性部分が画像で描出される前に画像で指摘しうる所見を検討していく。また、今年度進めてきた子宮体癌の予後予測については、基本的には予後が良好であるため、再発を主眼に臨床パラメータに加えて画像の、殊に拡散強調像の予後への関与の有無について検討を進める。 一方、子宮頸癌については、再発率が比較的高いため、その経過観察計画は重要である。近年CT検査の高速化から広範囲の撮像を年に何度もされる症例もあり、患者被ばくの軽減のためにも適切な検査計画を立てるために、再発部位、期間等の詳細な検討を画像から検討していくことを計画している。予後予測の報告はこれまで多数あるが、それらとは視点を変え、より臨床に即した予後への関与も同時に評価することが可能になると考えている。 多施設共同研究については、現在、欧州泌尿生殖学会の婦人科コミティーで進められている婦人科腫瘍を主体とした研究・ガイドライン作成に携わっており、今後、当施設で進める共同研究の模範となると考えている。
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