本研究では、多様な撮像方法を用いて、子宮の形態とともに、機能の解析を推進し、また疾患への応用を模索していくことを目的とした。これに対し、下記のような業績が得られた。 子宮体癌の治療後の再発リスクについて、術前画像から推測可能であるか検討を行った。術前に撮像されたMRI検査210例について、そのADCの最小値・平均、補正後ADCの最小値・平均を複数の臨床から得られる要素(年齢、組織型、リンパ節転移、Stage、リスク分類等)と多変量解析を行った。結果、補正前後のADC平均値は無再発期間(recurrence free survival:RFS)と有意な相関が認められ、ADCが低いほど、RFSが短くなることが明らかとなった。この研究からは、治療前のMRIから得られるADC値が術後外来フォローにおいて重要な因子となることが示された。 内膜症性嚢胞と関連する腫瘍について、過去にも我々の研究グループにてその画像的特徴について公表してきたが、それを更に進め、28年間のMRI検査画像より子宮内膜症から発生する卵巣癌について、実症例を後方視的に検討し、早期に画像で悪性腫瘍の発生を指摘しうる所見を検討した。その結果、これまでの報告されてきたT1強調像での信号変化は有意な差を認めず、腫瘍サイズの増大、内部の充実部分の発生が悪性を示唆する所見として有意であることが示された。 また、多施設研究としては、欧州泌尿生殖学会の婦人科コミティーで進められた内膜症のMRI撮像法、診断のガイドラインに関して報告を行った。また、子宮体癌のMRI撮像法・診断のガイドラインに関してもアンケート方式の報告をまとめ、現在投稿中である。 妊孕性温存手術としての腹式子宮頸部摘出術後患者における子宮蠕動の検討については、昨年末に症例の蓄積が完了したため、今後、健常子宮との比較検討を進め、学会・論文発表の予定である。
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