研究課題
本研究では、まず高線量率照射における皮膚及びビルドアップ領域線量の物理学的検証では、モンテカルロコードPHITSにより、高線量率ビームによる表面線量及びビルドアップ領域を計算すると共に、ファントム中にEBT3フィルム、平行平板形電離箱、ピンポイント電離箱を埋没し、また表面に貼り付けるなどして表面線量及びビルドアップ領域の線量測定を行いFFFビームと通常のビームの違いを評価した。また現状の放射線治療計画の計算アルゴリズムでは、リピオドールの効果を定量評価できないため、PHITSを用いて、この物理的線量増強効果を評価した。次に高線量率体幹部定位照射の基礎的臨床的検討においては、高線量率照射を用いた体幹部定位照射の有用性について基礎的に検討した。今回、高線量率照射により照射時間の短縮が可能となり、吸気呼吸停止において再現性がどの程度向上するかを検討した。また呼吸性移動を伴う早期肺癌への短時間照射放射線治療の臨床応用精度を開始した。今後はさらにIMRT照射技術であるVMATにおける高線量率照射法の有用性の確立と種々の時間因子を考慮した次世代放射線治療計画法の開発高線量率をめざす。高線量率リニアックを用いた新規照射法を開発することで、我々の専門とする放射線治療計画システム開発技術と高精度放射線治療技術とが有機的に結びつくことになる。
2: おおむね順調に進展している
1.高線量率照射における皮膚及びビルドアップ領域線量の物理学的検証については、既に基礎実験による評価を開始している。表面線量測定用平行平板形電離箱専用にタフウォーターファントムの加工を行い、FFFビームと通常のビームで皮膚線量にどのような違いがでるか比較測定を行っている。また、リピオドールなどの造影剤が腫瘍内に含まれる場合の、線量分布への影響については、PHITSにより物理的線量増加効果を通常ビームとFFFビームでどのように異なるか評価を行った。物理的線量増加効果以外にも、散乱エックス線のエネルギースペクトルへの影響、散乱電子への影響についても定量的に評価を行っている。さらに6MV FFFと10MV FFFでの違いについても評価を行っている。2.高線量率体幹部定位照射の基礎的検討についても、既に基礎実験による評価を開始している。3.高線量率強度変調回転放射線治療の基礎的検討については、昨年度は研究が開始できなかった。4.時間因子を考慮した次世代放射線治療計画法の開発に関しては、既に研究を開始している。5.高線量率照射装置を用いた新規照射法の精度保証においては、既に呼吸性移動を伴う早期肺癌への臨床応用を開始している。また、肺および肝のSBRTを高線量率VMAT実施した照射について、毎日の治療前に撮影したCBCT画像とIGRTの結果を元に、線量分布の再計算を行い、日々の照射の精度保証を行う研究を行っている。
本年度は昨年に引き続き、高線量率照射装置を用いた新規照射法の治療計画の最適化を行う。本研究では、TrueBeamのFFFビームによるIMRTおよびVMATの実用化に関する研究をまず呼吸による腫瘍の動きの線量分布への影響が無視できる頭部、頭頸部において照射時間が短く、計算精度が悪化しないIMRTおよびVMATの治療計画パラメータ(MLCスピード、ガントリー角度毎のMU値、セグメントサイズなど)の探索を行う。次に呼吸による腫瘍の動きの線量分布への影響が無視できない胸部や腹部の照射については、1回の息止め可能時間(~15秒)で照射完了するVMATプランを作成する。また本研究では、EBT-XDフィルム及びピンポイント電離箱による治療計画の検証測定を行い、治療計画の信頼性についても確認する。 日々のCBCT画像を使用した実際の線量分布の評価については、CBCT画像上の各ROIを治療計画CTからのDeformable Image Registrationにより再定義し、照射の線量分布とDVHを得る。また、高線量率照射法の体幹部定位照射への肝臓癌への臨床応用を開始する。具体的には、肝細胞癌への定位照射において肝機能温存を目的とした機能画像を用いた治療計画を強度変調回転放射線治療の手法を応用して施行することを検討する。また高線量率強度変調回転放射線治療の食道癌への臨床応用を開始する予定である。具体的には、食道癌の制御率向上と放射線治療後の晩期心毒性低減のために、高線量率照射装置を用いた強度変調回転照射技術を開発してゆく。その後に次世代放射線治療計画法を検証した上で、短時間照射の臨床応用も開始する。具体的には、次世代放射線治療計画プログラムを開発して、肝臓癌や食道癌、そして肺癌や子宮癌患者に対する臨床応用を試みる。
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