研究課題
1、モデルマウスによる膜透過性変化測定: 急性低還流・慢性低還流の負荷を加えたマウスを用いて開発中の細胞膜水透過性にウェートをかけたMRI撮像法の評価を行った。急性低還流モデルは一方の中大脳動脈を閉塞させて脳梗塞を発症させて直後にMRI撮像を行い、画像変化を経時的に観測した。撮像早期よりMRI上での認められた梗塞部位での信号変化は水透過性を示唆するものであった。一方、一方の内頚動脈を閉塞させる慢性低還流マウスは一か月経過後であって水透過性変化を示す信号変化は認められなかった。2、ヒトMRI応用研究: 健常者を対象にヒトMRIでの測定法確立のための基礎的検討を行った。傾斜磁場の装置最大強度に大きく依存する撮像で、当施設のヒト用MRIでは動物MRIの3分の1程度の強さの拡散強調しか付加できなかった。このため、健常者の脳組織では細胞膜水透過性を定量的に評価するに足る画像クオリティを得ることができなかった。低酸素組織を評価できるPETとマルチ拡散強調MRIとを用いた頭頚部ガン組織評価では、低酸素状態にある組織で細胞膜水透過性更新を示唆する結果を得た。こちらは定性的ではあるが、腫瘍の水透過性評価の可能性を示唆する結果であり、来年度からの研究では腫瘍に関する研究にもウェートをかけていく予定となった。3、膜透過性モデル解析用ソフトウェア開発:汎用ソフトウェアの基礎となるシミュレータの開発に着手した。
2: おおむね順調に進展している
2年目の課題であったげっ歯類での基礎実験が順調に進んでいる。ヒト用MRIへの応用に関しては健常者の脳での測定では傾斜磁場強度などの理由から変化がとらえにくい状態であったが、腫瘍を対象とした基礎検討で有用性を示唆する結果が出ており、今後の改良などによる臨床診断応用の可能性を検討していきたい。膜透過性モデル解析用ソフトウェア開発のための基礎検討も順調に進んでいる
げっ歯類を用いた基礎検討では、脳低還流モデルに加え、AQP4ノックアウトマウスを用いた研究も進めていきたい。また、光イメージングの技術と合わせて行うことにより詳細な測定法の解析や生体の水拡散メカニズムの解明を行っていきたい。また、ヒト脳の水拡散を想定した疑似ファントムを作成し、測定法の安定性や再現性も確認していきたい。
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