研究課題
核医学で用いる核種には画像診断用(In-111、Ga-67など)と治療用(Y-90、Lu-177、Cu-64/67など)があり、例示した核種は化学的性質が類似している。リポソームはいずれの核種も原理的には封入可能であり、同じリポソームを用いて核種を換えるだけで画像診断と核医学治療の両方を可能にできる製剤の開発を本研究の目的としている。薬剤の分布を可視化でき、治療効果の予測や評価が可能となる。治療用核種の供給が予定より遅れたため、まず、治療用核種の代わりに抗がん剤ドキソルビシン封入リポソーム(D-lip)を用いて、放射活性集積による薬剤の腫瘍集積評価と薬剤の治療効果との相関について検討を行った。ヒト卵巣癌皮下移植モデル4種類を用いてD-lipの薬効を検討した結果、癌腫によって差があり、さらに薬効とIn-111リポソームの腫瘍集積に相関が認められた。次に治療効果の個体差が大きかったSK-OV-3担がんマウスにIn-111-リポソームを投与して各々の腫瘍集積量をSPECT/CTで評価した後に、D-lipを投与し、25日間腫瘍径等を観察した。その結果、治療前のIn-111-リポソーム腫瘍集積量とD-lipの治療効果は優れた相関を示した(R2=0.73)。すなわち、D-lipの薬効はリポソームの腫瘍集積量に依存しており、In-111-リポソームを用いたイメージングによって薬効を予測できた。D-lipの代わりに治療十分量の治療用核種を腫瘍に送達できれば、同様に治療効果が期待でき、その送達量を予め評価できるのがこの系の優れた点と考える。年度内に治療用核種としてCu-64の供給を受けることができ、リポソームへの封入と担がん動物への投与等を実施した。リポソームへの封入は良好であり、担がん動物での体内動態はIn-111-リポソームとほぼ同等であった。現在治療実験に向け、準備を進めている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件)
Cancer Science
巻: vol.108(11) ページ: 2273-2280
10.1111/cas.13392
Anticancer Res
巻: vol.37, no.12 ページ: 6629-6638
10.21873/anticanres.12120