研究課題/領域番号 |
15H04916
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
後藤 昌史 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50400453)
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研究分担者 |
岡田 秀親 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (30160683)
山形 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40230338)
村山 和隆 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (40400452)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 膵島移植 / 酵素 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
膵島移植は、安全・簡便・低侵襲であり患者に優しい画期的治療法であるが、現状においては質の高い十分量の膵島細胞を安定的に得る事が困難であるため、未だ一般医療に至っていない。本研究においては、時代を先取りする”テーラーメイド型細胞分離システムの構築” により膵島移植が抱える課題の解決を図り、膵島移植を糖尿病に対する理想的な次世代細胞療法として確立する事を目的としている。本年度は、まず前年度に引き続きコラゲナーゼG(ColG)が膵組織を消化する際に対象となる基質について検証を行った。その結果、ColGのV型コラーゲンに対する特異性は極めて高く、ColHが殆ど消化できないのに対し、ColGはV型コラーゲンを良好に消化し得ることが明らかとなった。また切断部位を詳細に観察したところ、ColGによる消化はコラーゲントリプルヘリクス構造のN末側1/3~1/2付近での消化が顕著である事が判明した。この事はテーラーメイド化においてドナー特有のマーカー探索の大きな手がかりになると考えられる。次に各種中性プロテアーゼの対象基質の検証を目的とし、プロテオグリカンやコラーゲンといった膵島分離の鍵となる因子に関わるタンパクとしてラミニンに着目し、基質消化実験を実施した。その結果、従来の中性プロテアーゼであるサーモライシンに比較し、新規開発中性プロテアーゼであるChNPやCPによるラミニンの消化はマイルドであり、511、411といったサブタイプに対してα鎖の切断を示す事が明らかとなった。最後に上記検討結果を踏まえ、ラミニンα鎖について相補ペプチド10個を設計し質量分析による結合の確認、中性プロテアーゼによる消化阻害を解析したが、これまでのところ著効を示すペプチドは確認できていない。相補ペプチドは配列のみから導かれるものであり、出来上がったものの性状について考慮できないため、更なる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から本年度にかけての重要な解決課題と設定していたコラゲナーゼGの特異的基質同定に関し、質量分析と基質消化試験を組み合わせる解析法の至適化に成功できた点が最大の理由である。これまでのところ、このassay系を用いることにより、特にコラーゲンVが特異性の高い候補対象基質であることを明らかとし、学会ならびに論文発表を済ませることができた。さらに本年度は、中性プロテアーゼの対象基質の一つとしてラミニンに着目し、その切除部位が中性プロテアーゼの種により異なる事を見出すことができた。今後、さらに網羅的検証が必要となるが、計画はおおむね順調に推移していると判定できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は当初の計画通り順調に推移しているため、来年度も申請の計画に従い、開発中性プロテアーゼの特異的基質同定を継続し、さらに開発中性プロテアーゼが分離膵島の炎症状態へ及ぼす影響についても解析を進めていく予定である。本年度、開発中性プロテアーゼの大量生産に時間を要し、大動物における前臨床試験が実施できなかったため、この点に関しては、本年度中に大量生産が可能となり次第、実施していく予定である。
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