研究課題
1.輸注細胞のMHC発現抑制技術の開発:非自己細胞を輸注した際の宿主免疫系による拒絶を原弱させる目的で、輸注細胞のβ2ミクログロブリンの発現を抑制し、T細胞のMHC class IをMHCのタイプに関わらずに発現低下させることを目指した。ヒトT細胞のMHC class I発現抑制を可能する為に、ヒトβ2ミクログロブリンに対するCRISPR-Cas9システムのコンストラクトを作成した。ガイドRNAを2種作成し、プラスミドベクターに組み込むことに成功した。2.受容体改変T細胞を用いた、非自己排除評価系の確立と非自己排除因子の解明:重度免疫不全NOGマウスに受容体遺伝子改変ヒトリンパ球を輸注するインビボ評価系を用いた。NY-ESO-1抗原陽性のヒトメラノーマ細胞株を接種したNOGマウスに内因性TCR遺伝子発現抑制レトロウイルスベクターにより非自己反応性を減弱させつつNY-ESO-1特異的TCR遺伝子を導入したヒトT細胞を輸注した。腫瘍細胞の拒絶にはCD8陽性T細胞が関与すること、移植片対宿主病(GVHD)の発症にはCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞の療法が関わることが明らかとなった。GVHDはCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞いずれの場合も内因性TCR遺伝子発現抑制レトロウイルスベクターにより非自己反応性を減弱させると発症が抑制可能であることが明らかとなった(2015ヨーロッパがん免疫療法学会(CIMT)総会他にて発表)。3.細胞内抗原を認識可能なキメラ抗原受容体の作成:細胞内抗原を認識可能なメラ抗原受容体の作成を目指した。ファージディスプレイライブラリー法を用いて組換えHLA-A2402分子と細胞内がん抗原WT1由来ペウチドとの複合体に結合するscFv抗体をスクリーニングし、目的の複合体を特異的に認識する抗体WT#213を取得した。
1: 当初の計画以上に進展している
「輸注細胞のMHC発現抑制技術の開発」と「受容体改変T細胞を用いた、非自己排除評価系の確立と非自己排除因子の解明」について予定通りに研究が進み、さらに新たながん認識抗原受容体遺伝子として細胞内抗原を認識可能なキメラ抗原受容体の作成にも成功している。
1. 輸注細胞のMHC発現抑制技術の開発:平成27年度の研究を発展させ、β2ミクログロブリン発現抑制CRISPR-Cas9をヒトT細胞株に遺伝子導入し、MHC class Iの発現低下を確認し、効率が良かったCRISPR-Cas9を用いてレトロウイルスベクターを作成する。作成したCRISPR-Cas9レトロウイルスベクターを感染させることでヒト末書血リンパ球に効率良くMHC class I発現欠失を誘導することを確認する。siTCRベクターによる腫瘍特異的TCR遺伝子導入と組み合わせて、内因性TCR抑制、MHC classI欠失、腫瘍特異的TCR陽性の、受容体改変ステルスT細胞が作成可能であることを示す。2. 受容体改変T細胞を用いた、非自己排除評価系の確立と非自己排除因子の解明:平成27年度の研究を発展させ、内因性TCR発現を抑制して非自己反応性を減弱させたT細胞が反応する際のマルチファンクション性について解析する。上記1で作成する受容体改変ステルスT細胞についても反応する際のマルチファンクション性について解析する。3. 細胞内抗原を認識可能なキメラ抗原受容体の作成:平成27年度の研究を発展させ、HLA-A2402分子と細胞内がん抗原WT1由来ペウチドとの複合体を特異的に認識する抗体WT#213を用いたキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR)を作成し、インビボにおける効果を重度免疫不全NOGマウスにて評価する。さらに本CARを用いた受容体改変ステルスT細胞の作成を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 図書 (4件) 備考 (1件)
Immunotherapy
巻: Epub ahead of print ページ: Epub ahead
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