研究課題
(1)水素ガスの移植肝保存への応用:一酸化炭素 COを用いた臓器保存の実験開始に先立ち、毒性を有しない水素ガスを用いた実験を開始した。水素ガスは強力な抗酸化能力を有し(Ohsawa et al. Nature Med 2007)、フリーラジカルと反応して“無害な”水しか生成しない点で非常に魅力的な抗酸化物質である。今回、水素発生剤(水酸化カルシウム)および耐圧試験管を用いて既報と比較して高濃度な水素含有臓器保存液(水素濃度5~8ppm)の作成に成功した。ラット正常肝を単純冷却保存群(UW液、4℃)、水素含有冷却保存群(水素含有UW液、4℃)の2群に分け、24時間保存したのちに、体外再灌流装置により臓器保存状態及び保存後の肝機能を評価した。再灌流後の酸素消費量、胆汁産生量は水素含有保存群で有意に高く、灌流液中の AST, ALT, LDHなどの逸脱酵素値は水素含有保存群で有意に抑制された。水素ガス分子のグラフト保護効果が示唆された。(2)混合ガス(O2、CO, CO2)を用いた高圧気相保存法:一酸化炭素ガスを使用するにあたり、ガス検知器を始めとする安全対策、実験環境の整備を行った。予備実験としてO2+CO2混合ガスを用いて高圧気相保存を行った。ラット正常肝を単純冷却保存群(UW液、4℃)、高圧気相保存群(O2+CO2混合ガス、0.2-0.4 MPa)の2群に分類し、24時間保存後に、体外再灌流装置により評価した。本実験の結果からは、高圧気相保存群の優位性は示唆されなかった。しかしながら、胆汁酸生、酸素消費などの臓器活性は高圧気相保存群においても維持されており、一酸化炭素の適応などのガス組成の最適化により、より良好な結果が得られる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
水素ガス分子の冷却保存環境下での臓器保護効果をラット正常肝において認めたが、脂肪肝グラフトに対する効果については現在実験中である。高圧気相保存法におけるガス組成の最適化は現在検討中である。CORMの灌流保存法への適応は現在実験中である。
・水素ガス分子の冷保存環境下での臓器保存効果を、脂肪肝グラフトを用いて検討する。・高圧気相保存法における最適なガス組成、保存圧力を検討する。・CORMの臓器保存効果を灌流保存法において検討する。・上記の臓器保存効果を、ラット同所性移植により評価する。
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