研究課題
一酸化炭素(CO)はその毒性のため、安全性確保が最重要課題である。本学動物実験施設では許可が下りず、専用ラボを別途獲得の上 実験を開始したが、有効濃度域により 大型ドラフト設置と排気ダクトを屋上へ導く工事が必要との指導を受け、最終年度に実験環境が整った経緯である。従って本研究①と並行して、同じく脂肪肝保存に有用性が期待される室温灌流保存法の開発②を併施し、更には、同じく医療分野への応用が期待され かつ毒性のない水素ガス(H2)を用いた研究③を行った。① まず 5%CO2+95%O2混合ガスを用いて、高圧環境(3~5atm)の臓器への影響について検討、明らかな圧障害がない事を確認した。低濃度よりCO+O2で気相保存を開始し、48時間の保存肝より胆汁産生を得、超長時間保存における気相保存の効果が期待されたが、単純冷保存(従来法)に比して有意性を示すには至らなかった。より高濃度のCO濃度で検討していくため、本邦最大手のCO製造企業から技術支援を受け、今後の研究/開発を進展させる予定である。② 脂肪肝保存における室温灌流保存の成果については、論文2, 3を参照されたい。③ 強力な抗酸化作用を有し かつ無害であるH2は、臓器移植/保存における永遠の命題、虚血再灌流障害IRIを制御する革新的技術となる可能性を秘めているが、その臨床応用には H2の持つ "高い物質/組織透過性","難溶性","可燃性"という障壁を克服する必要がある。我々は、ラット肝を用いて 冷保存前、中、後(移植前)でその保護効果を検討し、冷保存後に1ppm H2溶液を直接血管内注入するHyFACS法が、IRIを有意に軽減させる事を解明した。COやH2に代表される 幾多の生理活性を有するガス分子は、医療応用の可能性と共に 解決すべき複数の課題を有している。山積する障壁を個々に解決しながら、将来の臨床応用へと繋げたい。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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