研究課題/領域番号 |
15H04923
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
湊谷 謙司 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (20393241)
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研究分担者 |
山岡 哲二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50243126)
馬原 淳 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (80416221)
大高 晋之 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動 (30739561)
MUNISSO Maria Chiara 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 特任 (50616084)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人工臓器学 |
研究実績の概要 |
拡張型心筋症に対する自己抗心筋抗体除去療法が注目を集め、選択的血漿成分吸 着器を用いたアフェレーシス治療が検討されている。本研究では、国立循環器 病研究センターにて開発された「薬物誘導型血中病因物質除去システム(Drug Navigated Clearance System, DNCS) 治療」(特許5429804号、米国特許US8,834,887 B2)を拡張型心筋症モデル動物に適 応 し、その有効性の検証を進めた。血中に存在する拡張型心筋症の原因と考えられる抗自己心筋抗体を、肝臓へと誘導して分解・排泄させる新規薬物 である「ナビゲーター」分子として、標的結合抗体と肝臓LDLレセプターに結合するApoE分子の結合体を合成した。それぞ れの1対1結合体の合成は容易ではなく、複数分子が結合したナビゲーター での検討を進めた。まず、ナビゲーター分子と標的分子との結合についてゲル電気泳動により調べたところ、ナビゲータ合成後に も、標的分子との結合能を有することを確認した。さらに、ナビゲーション現象をin vitroで検証するために、ヒト肝細胞HepG2細胞と対照細胞としてヒト内皮細 胞を 利用した。ナビゲーター分子とターゲット分子を、それぞれ、緑および赤の蛍光色素で標識して検討したところ、HepG2において、ナビゲーター分子が共 存す るときのみ、標的分子の細胞内取り込みが増加した。また、両蛍光スポットが共在することから、ナビゲーター分子の働きにより、標的分子を肝細 胞に誘導できることが証明できた。また、ナビゲーター分子のマウス体内動態を検討したところ、肝臓への蓄積量が有意に高くなったことか ら、ナ ビゲーター分子は誘導能を有していることが確認された。予備的に、蛍光標識分子の肝臓ナビゲーション現象を検討したところ、定性的ではある が、その効果を確認することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたナビゲーター分子と標的分子との結合についてゲル電気泳動により確認が完了した。また、それぞれのパーツが標的分子と相互作用することも実証され、さらに、ナビゲーター分子の肝臓への蓄積も確認されたことから、おおむね計画した内容を遂行できたと評価する。詳細は、研究実績の概要に記した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで上述の 2 分子間反応を 進めてきたが、図で示すほど反応 は単純では無く、その反応効率は 十分ではない。これまでのノウハ ウの蓄積から、捕捉分子と誘導分 子が 1 対多で反応した分子の合成 には成功してきた。 しかしながら、DNCS のメカニ ズムからは、1対1のナビゲータ ー分子の合成が重要と考えられ る。高分子分子同士の反応が困難 であることから、タンパク質とオ リゴ DNA の反応を応用する事を 計画している。図に示したように、 タンパク質とオリゴ DNA との反応はこれまでにも多くの報告がある。従って、標的捕捉分子に対 してオリゴ DNA1を 1 分子結合させ、それに相補的なオリゴ DNA2を誘導分子に結合させた後 に、両者を混ぜ合わせれば、1 対 1 で反応したナビゲーター分子が合成できることとなる。また、 結合しなかった分子に関しては吸着カラムにて容易に除去することも可能であると考えられる。 【in vitro テスト】 本ナビゲーターを用いた in vitro における、結合常数実験および、細胞取り込み実験などは、平 成 27 年度と同様に実施する。
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