研究課題/領域番号 |
15H04929
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
今野 弘之 浜松医科大学, 医学部, 学長 (00138033)
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研究分担者 |
平松 良浩 浜松医科大学, 医学部, 助教 (00397390)
神谷 欣志 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (20324361)
菊池 寛利 浜松医科大学, 医学部, 助教 (70397389)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌 / 細胞・組織 / 血中循環腫瘍細胞 / 転移 / 定量位相顕微鏡 |
研究実績の概要 |
血中循環腫瘍細胞(circulating tumor cell: CTC)は、原発または転移腫瘍組織から遊離し血中へ浸潤した細胞と定義され、血行性転移の機序の一つとして注目されているが、末梢血の有核細胞10の6-8乗あたり1個程度と非常に少ないため検出が困難である。一方、血行性転移の一機序である上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition:EMT)を生じたCTCの存在が証明されており、細胞表面マーカーを用いた従来の選別法(positive selection)では、転移に関与する重要なCTCを検出できないという問題が生じる。このため、本研究では細胞表面マーカーに依存しないnegative selection法として、浜松ホトニクス社の定量位相顕微鏡(QPM)を用いた光学的CTC選別法を開発してきた。 血液前処理の効率化を目指し、既存のFicollを用いた遠心分離法と血液分離キットであるHetaSepを用いた遠心分離法を用いて有核細胞を分離し、赤血球や血小板などのデブリの混入率を比較したところ、HetaSep法の優位性が確認された。次に、健常人白血球と、GFPを発現させた大腸癌細胞株(HCT116)とを任意の割合で混合して疑似CTCモデルを作製し、健常人白血球をnegative imageの訓練画像として機械学習させた識別器を作成した。この識別器はHCT116と白血球を高い精度(AUC=0.99982)で識別可能であった。これまでは静止した細胞の観察に留まっていたが、流路系におけるQPM観察を可能とすべく開発を行った。シースフローを用いて細胞を直線化して流すことにより、流路中における細胞の重なりが減り、有核細胞の観察の効率が向上した。現在、白血球と大腸癌細胞株の識別能の向上を目指して開発を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の修正を必要とし、計画の一部を中止した。一方、これまでに得られた新たな知見から新規課題が同定され、当初の計画以上の成果も得られている。全体として、概ね順調に研究が進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までの研究において、流路系におけるQPM観察を可能とすべく開発を行ってきた。シースフローを用いて細胞を直線化して流すことにより、流路中における細胞の重なりが減り、有核細胞の観察の効率が向上したが、流路系の開発や光学システムの改良などにより、更なるCTC観察技術の改善が必要である。平成29年度もQPM観察技術の改良・開発を継続して行い、実際の癌患者の血液を用いたCTC同定を試みる。
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