研究課題
血中循環腫瘍細胞(circulating tumor cell: CTC)は、原発または転移腫瘍組織から遊離し血中へ浸潤した細胞と定義され、血行性転移の機序の一つとして注目されているが、末梢血の有核細胞10の6-8乗あたり1個程度と非常に少ないため検出が困難である。一方、血行性転移の一機序である上皮間葉転換を生じたCTCの存在が証明されており、細胞表面マーカーを用いた従来の選別法(positive selection)では、転移に関与する重要なCTCを検出できない。このため、本研究では細胞表面マーカーに依存しないnegative selection法として、浜松ホトニクス社の定量位相顕微鏡(QPM)を用いた光学的CTC選別法を開発してきた。血液前処理の効率化を目指し、既存のFicollおよび血液分離キットHetaSepに加え、塩化アンモニウムを用いた遠心分離法を用いて有核細胞を分離し、赤血球や血小板などのデブリの混入率を比較したところ、塩化アンモニウム法が最適な血液前処理法であると評価した。次に、健常人白血球とGFPを発現させた大腸癌細胞株(HCT116)を流路中でQPM観察し、任意の割合で混合して疑似CTCモデルを用いて、健常人白血球をpositive imageの訓練画像として機械学習させた識別器を作成した。健常人やヌードマウスの血液を前処理した試料とGFP発現培養癌細胞を混合した擬似CTCモデル、およびGFP発現培養癌細胞のマウス移植モデルの血液を前処理した試料を用いて、QOM観察と蛍光画像の同時撮影を行い、撮影装置の臨床的評価を行った。さらに、食道癌および胃癌患者の血液を前処理した試料をQPM観察し、得られた撮影データを識別器にかけたところ、癌患者に特有の細胞集団が観察され、新規CTC候補の可能性が示唆された。現在も解析を継続中である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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